聞かなくても ページ32
『カタクリ様は、嫌いなものはございませんか?』
厨房である物を用意しながら問いかける。
「ない…と言いたいところだが、ラーメンだな」
『ラーメンですか?』
「ああ…」
『味などは関係なく?』
「そうだ。あれは食い辛い」
『ああ、成程』
納得してクスリと笑う。確かに、カタクリ様の格好ではラーメンを食べるのは面倒そうだ。
『では、他に苦手なものはございませんね?どうぞこちらを』
言いながら、私はティーカップをカタクリ様に差し出す。
「茶?厨房に茶葉があったか?」
『ちゃんとした茶葉は別のところに保管しているようですね。ですので、これは厨房にもあるものでご用意しました』
「…ハーブティーか」
『ええ。今晩はこちらをご一緒したくて』
「明日の準備はいいのか」
『材料リストは後でお渡し致します。けれど、今はこちらを召し上がって頂けませんか?』
『これも準備のひとつです』といたずらっぽく人差し指を立ててみせると、カタクリ様が訝しげにカップを手に取る。
『こちらの椅子に』
「ああ…」
『ドーナツには飲み物も必須でしょう?ですが、これは明日ではなく今飲んで頂きたくて』
「…どういうことだ?」
『ふふ、それは後程ご説明致します』
「なんなんだ…」
私も自分用に用意していたカップを手に取る。温かい。そして落ち着く香り。うん、大丈夫そう。
「…ハーブティーにしては甘いな。何が入っている?」
『そちらも後程。…それよりカタクリ様?』
今、カップの中身が一瞬で消えた気がするのだけど。
『味わって頂けていますか?お口に合わなかったでしょうか…』
「いや、違う。そういうわけじゃない。おれは普段の食事からこうだ」
少しだけばつの悪そうな顔。そういう顔をされるということは…
『…徹底されておられるのですね。見られないように』
「…ああ、そうだ」
この様子だとご家族の前でも?まあ、その場に兵士やシェフもいるものね…うーん根深い。
『急いで飲んでしまわれたら意味がないのだけど…』
ぼそりと呟く。もう意図を説明してしまった方が早いかもしれない。けれどできれば…。
「…【これもひとつの準備】だったな」
『え?ええ』
どうすべきか迷っている内に、カタクリ様から空になったカップをずい、と渡される。
「注いでくれ」
そして。
『あ…』
ファーを外された。
『…はい、喜んで』
理由を聞こうかとも思ったけれど、きっと必要ない。
言葉を交わすより鮮明に、温かいものが伝わったから。
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時