理由 ページ27
『…え?』
呟いたカタクリ様が振り返る。その表情はどこか…ああそうだ、私が最初に望みを伝えた時の。気の抜けた、どこか寂しそうな…。
「…お前は一体何なんだ。無名の放浪者、力も全く感じない一般人。それがどうしておれを恐れない。挙句におれの心配だと?おれがお前を殺すというのにか。お前を知ろうとすればする程、わからなくなる」
『カタクリ様…』
「【心を奪われた】と言ったな。異常だ、お前は。心を奪われたというそれこそが」
『…違います』
「何が違うというんだ。お前も異常だというのは認めただろう」
そうだけど。違う。確かに心を奪われた。人生全てを塗り替えるような衝撃だった。通常の私とかけ離れた私を異常というならばそうだろう。
けれど、私がカタクリ様の未来を願うのは―
『私がカタクリ様を心配するのは、それだけの魅力を知ったからです!』
「たった2日で知った口を」
『ええ、2日です。2日間ずっと貴方のことを考えて、もっと知りたいと思っています。でも知りたいと思うのも、2日間で見えた貴方の全てが、とても素敵で尊いものだったから』
照れた顔の愛らしさも、気遣って下さる優しさも、約束を守る誠実さも、ご家族を想う愛情深さも。私の知る貴方の全てが、私にとってあまりにも―。
『…っですから、いい加減諦めて下さい。私はどう言われようとカタクリ様を心配してしまうんです。どうしてもというなら、教えて下さい。カタクリ様に幻滅する方法を』
魅力しかないんじゃないかというレベルでカタクリ様の良い所ばかり知ってしまったから、そう簡単にいかないと思うけれど。
そう、思ったのに。
カタクリ様の反応はまるで―私の言葉を待っていたかのようだった。
ゆっくり近付いて来たカタクリ様に身体を掴まれる。
苛立った様子なのに、加減されている力。突然の行動に戸惑っていると、カタクリ様が一瞬だけ笑ったような―気がした。
『カタクリ様…?』
「幻滅する方法か。そんなに知りたいのならもう一度よく見るんだな。おれの――バケモノの顔を!」
言って、カタクリ様がもう片方の手で自分のファーを取り払う。
現れたのはメリエンダで見た大きな口…だけど、雰囲気はずっと違う。鋭利な歯と縫い目のある口端を、私はこの時初めて認識した。
あの時は、大きな口でドーナツを頬張る姿が可愛いということしか見えていなかったから。
『…ッ!』
(見えていたぞ、お前の恐怖で引きつる顔が。お前の異常を、正してやろう)
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時