最強をダメにする最弱：１

醜い感情 ページ24

あの後、カタクリ様が軽食をいくつか持ってきて下さったけれど、【おれがいない間は休んでいろ】と何度も念押しされてしまい、私は午後の時間を布団にくるまって過ごすことになってしまった。
頭を使うことは出来るから、まったくもって意味のない時間にはならなかったのだけど。

…一部、余計なことも考えていたけれど。

『おかえりなさいませ、カタクリ様…』
「ああ…なんだその顔は。命令は守っていたんだろうな…？」
『はい！それは勿論！お陰様でこの通り！以前より元気なくらいです！』

昨日より恐らく早いお戻りに私が挨拶をするも、疑わしげな視線を向けられてしまった。力こぶを作りながら笑ってみせるけれど、表情ひとつ変えられない。本当に身体はちゃんと休んだんだけど…。

『はぁ…』
「それだ。休んだにしては顔色が沈んでいる。…時間の制約があるとはいえ、あのまま酷使しては2日後を待たずに衰弱しただけだぞ」
『あっ、違うんです！確かに何も出来なかったのは残念ですけど、カタクリ様が私を気遣って下さったことは本当に嬉しくて…！』

時間を無駄にしたことに焦っていると思われたのを慌てて否定する。
もっと出来ることがあったとか、ご迷惑をおかけして申し訳ないとか、それも勿論あるけれど。この溜息はそういうものではなく。

『ただ…』
「ただ、なんだ」

はっきりしない私の態度にカタクリ様が眉を寄せる。
…身の程知らずもいいところな理由なのだけれど、言うしかない。

『…メリエンダは、毎日決まった時間に…？』
「当たり前だ。貴重な糖分摂取の…、っ！」
『メリエンダのご様子を拝見出来なかったことが残念で複雑で…！』
「…っ聞くべきではなかった。……いや待て、複雑とはどういうことだ」

カタクリ様の問いに、羞恥からそっと顔を覆う。

『…呆れられると思うのですが』
「とっくに呆れている」
『…そうでした。では白状しますけれど、可愛らしいお姿を見られなかったことが悔しい気持ちと、でも見たらもっと悔しかっただろうなという気持ちがありまして…。見たいけど見たくない、というか、早く私も食べて頂けたら…と、そういう意味ですごく、焦ってしまって』
「な…」

自分でもすごく醜いなと思う。けれど。

『でも！この悔しさを力に、私は最高のドーナツをお作りしますので！』

息も荒く立ち上がる。なんだか白状したら更にやる気が出てきた。

「あ、ああ、そうしろ…」

きっと最高の美味しさを、貴方に届けてみせましょう。

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