最強をダメにする最弱：１

ドーナツの山から ページ3

「本日のメリエンダはもちもち生地のダブルチョコレートと甘いグレーズドーナツですカタクリ様」
「ああ、ご苦労…ん？一人足りないな…知り合いを？腕は確かな旅行者か…」
(さすがカタクリ様…！未来を先読みされておられる…！)
「信用に」
「『信用に値する人物』か。メリエンダを遅らせるわけにはいかない…その通りだ。お前は間違っていない」
(お、お優しい〜〜〜!!)

言いながら、カタクリはモチモチの実の能力で運び込まれたドーナツと紅茶を包む社を作り出す。

「糖分を摂取する。何人たりとも社に入れるな…」
「勿論ですとも！ごゆっくり…！」

そうしてカタクリは社の中へと入っていった。誰も入れるなとは言うが、餅でぴたりと閉じられた扉はそう易々と破られるものでもない。

(それでも毎日念を押されるカタクリ様。なんと繊細で完璧主義…！)

しかし既に社の中に人を入れてしまっているということを知る者は誰もいない。





(私は一体…)

私は気を失ったのと同じ充満した甘い匂いで目を覚ました。

(そうだ！私確か盛り付けの途中で気を失って…あの後どうなって…というか何か、重い…！)

何か少しべたつくものが身体の上に乗っている。それにこの甘い匂い、気を失った時の状況…

(まさか、ドーナツのカゴの中!?)

じゃあ私の上にドーナツが積み上がってるの!?

衝撃的な状況に頭がパニックになりそうだ。でも、私の上にドーナツがあるということはメリエンダはまだ終わっていないということ。時間はそう経っていないはず。

(カタクリ様はもういらっしゃってる？それともまだ？)

状況が掴めず、どんな風にメリエンダを過ごされるか聞いておくんだったと後悔している私の脳内に、ふと先程のパティシエとの会話が思い出された。

「メリエンダでは人払いを…」

(…！)

さっと顔が青ざめる。部外者の私が人払いをするはずのメリエンダに潜り込んでいるなんて知られたら、私だけじゃない、きっとパティシエもただでは…！

(知り合いを犯罪者にするわけにはいかない…！)

必死に息を潜めて、抜け出す方法を考える。甘いものに包まれていても、今の状況はちっとも甘くない。

コポポ…

(これは水音…？)

ボフッ！

(荷物を置いた？ううん、ベッドに倒れたみたいな…)

ガサッ

『っ！』

(音がすぐそばで！ドーナツを取ったんだわ！ということはカタクリ様…!?)

いけない、このまま食べられたら見つかっちゃう！でもどうすることも…！

「うまし！」

―え？？？？

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