小さな手が届く場所 ページ20
『【ベッドがないならいっそ膝枕で休んで頂く】というのも考えたのですが…』
「マッサージで良い」
『横になるのはお嫌そうでしたし、何よりカタクリ様を床に寝かせるわけにいきませんものね。残念です』
「早くしろ。そう言うからには座ったままだな?」
『ええ。手をお借りしてもよろしいですか?』
大袈裟に残念な顔をしてみせると、不機嫌そうに即答するカタクリ様。こぼれそうな笑いを堪えながら、私は渋々差し出された左手を両手で受け取った。
(利き手と逆。本当にどこまでも…)
少しの落胆を覚えながらグローブを外させてもらう。手首に触れた時に一瞬びくっとされたけれど、外すこと自体に大きな抵抗はされなかった。
グローブを外してみて、改めて大きな手に驚く。掌だけでも私の膝上と同じくらいの大きさだ。
(そういえば、片手で腰掴まれたんだった)
「おい。そこでする気か」
ちょうどいいのでそのまま自分の膝の上に左手を置かせてもらったのだけど、何か問題だっただろうか。
『?あっ、すみません布か何か敷くべきでしたよね』
「そうじゃない。…もういい、続けろ」
『すみません。次から気を付けます』
「次はない」
『ふふ』
とうとう我慢出来ずに笑ってしまった。案の定カタクリ様に不審なものを見る目を向けられてしまう。
「何がおかしい」
『いえ、なんだかんだこうしてお付き合い下さるカタクリ様はやっぱりお優しいなあと』
「…お前が押し通してるだけだろう」
『あら、そうでしたか?』
笑いながら親指と小指を広げさせ…ようとして手の大きさから普段通りは難しいことに気付く。
というか皮膚も大分固い。これは指圧というより手圧で押さないと効果がなさそうだ。
「…それにしても、パティシエはマッサージまで覚えるのか」
『私はたまたま…自分が凝りがちなので…んっ!』
「フッ。何だその力は」
『い、今のは力のかけ方がわからなかったので…!次は大丈夫です!大量のパン生地をこねるパティシエの力を侮ってはいけません』
気合を入れ直して再び押すと、なんとなく良い手応えが。よし、大丈夫そうだ。
『ところで』
「見間違いだろう」
『笑って下さいましたね、カタクリ様。見間違いでもいいですよ、得しちゃいました』
「何を…」
『カタクリ様の笑ったお顔を見ると幸せな気持ちになれますからね』
「……お前の幸せは変わっているな」
『そんなことないですよ』
(あ、少しは血流が良くなってきたかな)
温かくなってきた掌が嬉しい。
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時