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それが異常であっても ページ14

『…ありがとうございます。良かった、もし違っていたら大変なことになるところでした』

ひとまず一番聞きたかったことを聞くことが出来て、私は喜びと安堵で胸を撫で下ろした。

「…面倒な事を。だとしたら最初で訂正していたとは思わないのか」
『そう思ったとしても、念には念を、です。私はカタクリ様が一番喜ばれるものを作りたいのに、そもそも実は他のお菓子が好きだったなんてことになったら、そんなの死んでも死にきれません』

考えるだけでぞっとする。
もしあれ以上に幸せそうなお顔をさせるものがあるなら、それは是非見てみたいし聞かなくてはならない。

「死にきれずとも殺してやる」
『化けて出てもですか?』
「そこまで拘る必要がどこに…、っ」
『最初にお話したじゃないですか。私にとって【カタクリ様が私の作ったお菓子を幸せそうに食べる】というのは、命以上に価値あることなんです』
「…」
『【心を奪われた】と言ったでしょう。私を異常だと言うなら、異常にしたのはカタクリ様です。だから…くしゅっ』

【その機会が与えられて感謝している】と言おうとしたのに、自分のくしゃみでそれは遮られた。なんとも格好がつかない。いや、バスタオル一枚の身で格好も何もない。
窓の外を見ると陽が大分傾いている。湯上りでバスタオル一枚、窓の側なんてくしゃみも当然の状況だ。

「度胸の割に身体は貧弱だな」
『申し訳ありません…』
「構わない」

恥ずかしさに顔を覆う。すると、突然身体が何か温かいものに包まれた。
驚いて顔を上げると―

『えっ、か、カタクリ様!?』

私の身体をカタクリ様の大きな手が掴んでいる。混乱する私をよそに、宙に浮く身体。

「服も乾いただろう。着替えてクローゼットの中に入っていろ。おれはもうすぐママとのディナーだ」

そう言ってカタクリ様は私を床へと降ろす。
掴んでいる時も降ろす時も、力が加減されていたのがよくわかる程優しかった。

『は、はい。ありがとうございます、カタクリ様』
「異常にしたのはおれ、か…。おれの…」
『え?』

再び距離が開いてしまったせいか、カタクリ様が何を言ったのか上手く聞き取れない。
けれどカタクリ様はそれ以上話すつもりはないようで、早く着替えろと言わんばかりに私を浴室へと追いやった。

(やっぱり、優しい)

自分を殺す人間の幸せを願うのも変な話だけれど、それでも私の最期の瞬間はカタクリ様の幸せを望んでいたいと、そう―思った。

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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時

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