最初の質問 ページ13
「…不本意だが、今はお前を黙らせる手段が浮かばない。死の恐怖を持たない人間がこれ程厄介だとはな」
『そんな。人を異常者みたいに』
「おれからすればお前は異常そのものだ」
『そんなにたいした人間ではないと思いますが…』
カタクリ様は本当に警戒心の強い方なんだなと苦笑しつつ、私はそのまま登った窓の縁に腰かける。
『でも、その異常のおかげでお話出来るなら異常で良いです』
「許可したように聞こえたか?」
『私を黙らせられないのでしょう?でしたら私はカタクリ様に沢山話しかけます。全部ではなくても、カタクリ様がひとつでも答えて下されば、それはもうお話してるってことになりますから』
「口の減らない女だ。『時間がないから』…か」
『勿論、カタクリ様が私に聞いて欲しいと思うことがあれば、それは何だってお聞きしたいですけれど』
「そんな事は起こらない」
『ふふ』
【もう3分会話しましたね】なんて言ったらきっと怒られるんだろうな。
少し先の未来が見えるというカタクリ様とお話するのは、なんだか不思議なくすぐったさがある。
『あ、でもこれだけは教えて下さい』
「なんだ…。…、………ああ、そうだ」
『カタクリ様が一番好きなお菓子って、ドーナツで合っていますか?』
「もう答えた」
『いいえ。これはちゃんと質問の後に答えて下さい。絶対にこれだけは間違えるわけにはいかないんです。私はカタクリ様がドーナツを食べる姿を拝見して、【こんなに幸せそうに召し上がるならドーナツが一番好きなんだろう】と思いましたけれど、いつもドーナツを召し上がってるかなんて知りませんもの』
『カタクリ様』
顔を背けつつ抗議の視線だけこちらに向けてくるということは、わざわざ口にするのを恥ずかしいとでも思っているんだろうか。
これは睨まれているのかもしれないけれど、そうだとしたらあまりに可愛くて微笑ましい。
思わず口から出てしまいそうになるのを我慢する。本当にこれだけは間違えられない。カタクリ様の口から聞かないと困るのだ。
『カタクリ様は、何のお菓子が一番好きですか?』
じっと見つめて答えを待つ。どうしても目元が緩んでしまうのは許して欲しい。
肯定か否定かではなく、わざわざ単語を言わせようとしたのはやりすぎただろうか。
それでも私はただ待つ。話題を変えるでも、諦めるでもなくただじっと。
そうしてしばらくの沈黙の後、カタクリ様は観念したという様子で聞きたかった言葉を聞かせてくれた。
「…ドーナツだ」
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時