言いたい、聞きたい ページ12
『〜!ごめんなさい、言わずにはいられないです。カタクリ様は本当に、可愛らしい方だと思います…!』
本当に。今顔を背けたのも、照れた仕草だと思うと言葉にならない。言ったけど。
二度と同じ失態を繰り返さないようにと気を付けていたのに、どうしたって可愛いものは可愛い。
「おかしな女だ…!おれのことをそんな風に言う奴は他にいない。ましてお前、おれの食事シーンを見ておいて…」
苦虫を噛み潰したような顔のカタクリ様。戸惑っているような、何かに耐えているような…何メートルも距離がある横顔だけでは、その胸中を察することは出来ない。
『お食事をされている姿こそ可愛いと思いますが…。先程も食事シーンを気にされていましたよね?殺す理由も邪魔をしたことじゃなくて【食事シーンを見たこと】。何故そんなに……すみません、あまり聞かない方がよろしいですか?』
何気なく疑問を口にしたのだけど、どんどんカタクリ様の眉間の皺が深くなっている気がする。
「…お前には関係のないことだ」
『そう、ですよね…』
そう。関係がない。本来私はカタクリ様と会話する機会さえなかっただろう。
実際一月の滞在中、会話はおろか、遠目に見たのも何回かきりで、見聞色の覇気だなんて初めて聞いたくらいだ。
―でも。
私はバスタオルが落ちないように押さえながら、窓の縁に登る。たった1メートルでも、近くに。
『それでも、私は貴方のことを知りたいです。聞かれたくないことを無理に聞こうとは思いませんが、何がお好きなのか、何がお嫌いなのかだけでも。どんな些細なことでも。どうせ死ぬ女です、愚痴だって秘密のまま墓場まで持っていけますよ!』
「【好奇心は猫をも殺す】と言うぞ」
『ふふふっ!ですから、私はもう死ぬ女ではありませんか。カタクリ様』
「……」
『そうでしょう?』
目を丸くするカタクリ様がなんだかおかしくて、思わず笑みが深くなる。
私はもうすぐ死ぬ。恐らくカタクリ様の手で。むしろあの時殺されていたはずなのだから、今生きていることが異常なのだ。
『ですから私、気は遣っても遠慮はしません。そうでなければ、絶対に後悔すると分かっているんですもの』
「…お前は」
『カタクリ様、お話をしましょう。貴方のことを教えて下さればそれだけ、きっと3日後のドーナツも美味しくなりますから』
あ、と私は失言に口を押さえる。そしてもう一度。
『間違えました。絶対!美味しくしてみせますから』
―だから私と、お話をしましょう!
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時