成功と失敗 ページ2
「よし完成だ!」
無事に私達はドーナツを揚げ終えることが出来た。チョコレートやグレーズなどのコーティングも全て完了、あとは盛り付けてカタクリ様のところにお運びするだけだ。
時間も2時50分。移動の時間と冷めない時間を考えればタイミングはバッチリと言って良いだろう。
『良かった…』
「いやあ一時はどうなることかと思ったが、本当に助かった!ありがとう!」
『いえそんな!私もお手伝い出来て良かったです!こんなに素敵なドーナツですもの、きっと喜ばれますよ…!』
ただの手伝いとはいえ、私も含めこれだけの人がたった一人の為に頑張って作ったのだから、ちゃんと報われて欲しいと思うのは当然のこと。
けれど、パティシエは揃って首を大きく振った。
「喜ぶだなんてそんな!カタクリ様にとってのメリエンダはあくまで糖分補給!」
「そうだ!カタクリ様は完璧主義!決して誰かと楽しくティータイムなどなさらない!メリエンダですら人払いをして己を高められるのだ!」
え、あれ?
興奮気味に語るパティシエ。そこにあるのは心からの尊敬と賞賛。でも「美味しい」だとか「幸せ」だとかからは遠い言葉ばかりが飛び出してくる。
糖分補給。確かにそういう利点もお菓子にはあるけれど…ストイックここに極まる…。
(でも私は…)
やっぱり甘いお菓子は人を幸せにするものだと思うから。
カタクリ様のストイックさをほんの少しだけ残念に、ほんの少しだけ寂しく思った。
「おっと、せっかくドーナツが出来たてだというのにこのままではメリエンダに間に合わなくなってしまう!すぐに盛りつけるぞ!」
『…はい!』
私の理想は私の理想。お菓子を食べる理由を他の人にまで押し付けることは出来ない。
気持ちを切り替えて、出来上がった私の身長程もある大きなドーナツをカゴに積んでいく。
ひとつ。ふたつ。みっつ。
(これがよっつ、め…?)
甘い香りが強すぎて、なんだか頭がくらくらする。
それともやっぱり、ショックで気でも抜けていたのだろうか。
よっつめのドーナツを持ちあげた私は……
ドーナツと共にカゴの中に倒れ込んでしまった…!
…
…
「さあ後はカタクリ様の元にお運びするだけだな!急げ!」
「ん?Aはどこに行った?」
「そんなことは後だ後!とにかくカタクリ様にお届けするぞ!」
「それもそうだな!」
パティシエ達はカタクリの元に走る。気を失ったAも台車に乗せているとは知らずに。
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時