【銀魂】シ ュ ガ ー ポ ッ ト

sugar２３．高杉晋助 ページ25

『……おい』


長めの前髪から覗く目はギロリと私を捉え、更に髪の先からはポタポタと雫が流れ落ちていく。彼の立つ玄関の床には小さな水たまりができており、それでも私は負けじと彼を見つめた。


そうして先ほど彼、高杉晋助に向けて発砲した水鉄砲を利き手で弄んではもう一度かけようと銃口を向ける。しかしそれはお見通しだったようで、晋助は私の手から簡単に水鉄砲を奪い取ってしまう。


『何しやがる』

『ハロウィンだから』


だからイタズラをしてもいい。しかし晋助はそれならあの台詞ぐらいは言えと言いたげな息を吐いた。

あの台詞とは「トリックオアトリート」であり、どうせ晋助は用意なんてしていないだろうからとそれらを省いてイタズラを実行したのだ。


『海外では生卵投げるんだよ？ それよりマシでしょ』


玄関先にトイレットペーパーを巻いたり、生クリームを投げつけたりもするらしい。それよりかは水鉄砲の方が何倍も可愛らしいではないか。

だが晋助はいきなり私の顔に水鉄砲を発射する。驚きながら目を擦れば、彼は私の前に白い箱を差し出した。


『なにこれ』

『さァ？』


そう言い捨てては部屋の中へ入っていく。中を見ればそこにはケーキが入っており、慌てて彼の後を追いかけた。


『ケーキ！ ありがとう！』


どれを食べようかと悩みながら皿を出すも、私の背後に晋助が立つ。どうしたのだろうかと振り向くが、彼の口角はニタリと妖艶に上がっていて思わず生唾を飲み込んだ。


『お前は？』

『え？』

『トリックオアトリートだろ？』


さっき水かけたじゃん、とは言えずにおし黙る。彼はケーキをくれた上に水までかけられたのだった。

何か用意せねばと台所を見回すが、これといってあげるものがない。もうどうにでもなれと観念した私は晋助の服を握りしめる。


『私を、あげる』


言った途端に恥ずかしさがこみ上げて穴があったら入りたくなった。晋助の反応を見ずに逃げようと足を踏み出すのだがそれを逆手に取られ、彼は私の足の間に自分のを入れて逃げられなくしてしまう。


彼の匂いが、吐息が全て私の中に取り込まれるくらいピッタリとくっつく。心臓がバクバクと大きな音を立てており、今直ぐにでも飛び出すのではないだろうか。


『逃げんじゃねェよ』


どんな菓子よりも私が一番甘いと彼は甘美な言葉を吐いた。狼男もミイラ男もドラキュラなんかも怖くない。

怖いのはこの男、高杉晋助ただ一人で、それでいてとても愛おしかった。

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