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春たちを待っていると、急に周りにいる人たち…
黒沼さんや、あみさん、まくるさんがどろどろと溶けだした。
急なことで、私は何を言えるでもなくただただ立ち尽くし、呆然としていた。
これは現実の出来事なのだろうか。
これは。
「太陽さん！？まくるさんッ！！あみ、さん！？なんで、なんで、どうして、ぁ、ッあ、え」
そんなさなかで、一つだけ思い出した。
「春…！」
春は、春は。
下に降りて行った、春は。
無事なのだろうか。
はじかれるようにその場から駆け出し、階段をどんどん駆け下りていくと、およそ考えうる限り最悪の状況が広がっていた。
春も、平太さんも、溶けている。
春は辛うじて息があるようで、
「母体、ころ、し、スワンプマン、みんな、し、」
私に起こったことを伝えようと、消えそうな声を必死に紡ぐ。
なんで、なんで春が。
死ななきゃいけないの。
「なんで、春が…？春、いやだよ、死なないで、春、春、春…！」
最後に春は、
「じゃ、あ」
とだけ言って、こと切れた。
どろり、と溶けきった春。
その小さな沼のような「春だったもの」の中に、キラリと光るものを見つけた。
それを慌てて手に取る。
見ればそれは彼のペンダント。
いつだったか命と同じくらい大切だとか言ってなかったっけ。
「あ、あぁ、ああ、春、春、春、ぁあぁぁぁぁ」
私はもう動く気力すらなく、そこにへたりと座り込んだ。
もう、なにもかもいらない。
そして。
ガラガラと屋敷が崩れていく。
タイムスリップのようなことをしようとした反動だ。
それも、首謀者の彼が死んだのだから意味はないのだけど。
屋敷の崩壊を目の当たりにして、私はふ、と自嘲気味に笑った。
あぁ、私はここで死ぬんだ。
まぁ、春の一番近くで逝けるのなら、それはそれで幸せかな、なんて。
降り注ぐ瓦礫の中、私は「春だったもの」の中に倒れこみ、ペンダントをきつく握りながら意識を手放した。
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作者名：悠唯 | 作成日時：2020年12月6日 21時
