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[Lover’s Holiday : type Motoki] ページ9

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私たちが思っていた以上にクリスマスイブのレストランはどこもかしこも予約でいっぱいで、ようやく入れたのは郊外のファミリーレストラン。客足もまばらな店内で可でもなく不可でもない食事を済ませ再度車に乗り込んだ私は意識もせず深い溜息を吐き出した。

「そんな落ち込まんでも…」

初めて二人で過ごすクリスマスに犯した自分の失態は空腹を満たしても晴れることはなく、車のシートで小さく背を丸めながら募る罪悪感を唇に乗せる。

「本当に…ごめん。折角会えたのにこんな顔しか出来なくて。こんなんじゃ魁だって楽しくないってわかってるんだけど」

ちらと覗く彼の横顔は口を一文字に結った困り顔で、こんな顔をさせたかったわけじゃないのにと目頭がじわりと熱を持ち始める。私が泣いてしまえば一層彼を困らせると強く唇を噛み締めても、思考とは裏腹に溢れ出た雫が鼻先へと伝っていく。

「少し、ドライブしよっか」

落ちた気持ちがまるでそこにあるかのように膝上で握り締めた両の拳を眺め、時折刻むウインカーの音と彼が小さな声で歌うクリスマスソングを聴きながら行き先も知らされずエンジンの揺れに身体を任せてどれくらい経っただろう。突然に「そろそろ顔、上げて欲しいかも」という彼の声に視線を車外へと戻した私は濡れた頬を拭うことすら忘れぽかりと口を開けた。

「う…わあぁ、すごい…」

顔を上げた途端に目に飛び込んできたのは一面青白くライトで染め上げられた街で、その中心にはまるで巨大なクリスマスツリーのような東京タワーが悠然と(そび)えている。

「結構すごいっしょ?これ、事務所来た時に見てAさんにも見せたいなーってずっと思っててさ」

「うん、すごい…すごく綺麗」

「やっと笑った」と嬉しそうに眉を下げる彼の指がハンドルから離れ、膝の上の私の手に柔らかく重なると温かな体温が私を包み込んでいく。

「ほんと、今日はごめんね?」

今日何度目かわからない謝罪を繰り返した私の指に彼がしっかりと五指を絡め、信号待ちの赤いライトがいつもと変わらぬ穏やかな笑みを照らす。

「今日いちばんの“ごちそう”は帰ったら遠慮なくしっかりと頂きますから」

彼の意味深な言葉に言葉を詰まらせながら頬を染める私を余裕たっぷりに笑う彼に、きっと私は生涯敵わない。それでも構わないと思えるほど、私の恋人は誰より優しい私だけのサンタクロースなの。

—END—

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月雲(プロフ) - coyumaさん» coyumaさん、読んでくださってありがとうございます。柔軟な包容力で愛してくれそう、と書いたのでそれが伝わって嬉しいです。また来年もお付き合いくださいね。 (2019年12月31日 0時) (レス) id: 27315dcb3c (このIDを非表示/違反報告)
coyuma(プロフ) - モトキくんの柔らかな包容力を堪能できました!ほろりと幸せな気持ちになれました。 (2019年12月30日 16時) (レス) id: 96592c7e36 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月雲 | 作成日時:2019年6月19日 23時

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