◇27 ページ27
頭が真っ白で、ぴくりとも動けずにいた私から、
すっと、唇が離れて、
まだ大野さんの顔で陰が出来るくらいの距離で、眼鏡越しの目と目が合う。
「…な」
智「ぁに、キスん時目ぇ閉じない派？」
「……は？」
智「おら、閉じろ」
吐く息が唇にかかるくらいの距離で囁かれて、
少しだけ隙間のあいた唇が、また近づいてくる。
「…っ、ちょっ」
触れる直前で、どんっと胸を押して体を離す。
智「ぁんだよ」
「なんだよじゃないっ」
目を閉じる派かつぶる派かとか、そういう問題じゃなくてっ。
「なんで」
智「……」
「なんでこんなことするの」
まだ私に覆い被さった体勢のまま、
目の前の唇が、微かに斜めになって、
智「だって俺んこと好きでしょ？」
ちょっと悪そうな顔に、ほんのり色気の滲んだ表情で、
智「彼氏いねぇんなら…、俺が好きでしょ？」
余裕たっぷりな、甘い声。
…ねぇ、それはさすがに。
「…ぅ」
さすがに、酷すぎるよ。
チャラかっこよくて、自分のこと好きな女がすぐわかっちゃう女慣れ男でも。
この街のみんなの、正義の味方でも。
これは、お巡りさんがすることじゃないよ。
ぽろっと零れた私の涙を見て、大野さんが「ぅぉっ」って顔を離した。
智「ぁんで泣くの」
「だっ、て…」
智「ぁん？」
「彼女いるのに…」
智「は？」
"そういうの全部すっ飛ばして、ただ好きなやつ"がいるのに。
お遊びみたいに、こんなこと。
智「俺彼女いねーけど」
…………は？
私の肩に腕を回して、涼しい顔。
「なに言ってるの」
智「ぁん？なにが」
「だって、愛しの人がいるって。お互い大事にしよーぜって」
智「あー、あれか」
あれだよっ。
智「あれは、おまえらのこと」
「…は？おまえら？」
智「山風町に住む、全市民のみなさまのこと」
「……」
智「ほら俺、お巡りさんだから」
んね？って、なんかドヤ顔。
「はぁ！！？？」
智「うるっせ」
「絶対嘘じゃんっ」
智「嘘じゃねーわ」
「だって、全然そんな感じの言い方じゃなかったっ」
智「それはお前に彼氏がいっと思ってたから」
「…え？」
智「俺ばっか好きだと思われたら、なんか恥ずいじゃん」
普通の人なら、それこそ意を決して言うはずの「好き」を、流れるように口にして。
ねぇ？って、大野さんが笑った。
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チェシャ - あげはさんはじめまして。帰ってきてくださって本当に本当に嬉しいです。今回のお話も最高でした。あげはさんの書く物語が大好きです。戻ってきてくださりありがとうございます。大好きです😭🩷 (12月9日 16時) (
レス) @page38 id: b6a33cc3f3 (このIDを非表示/違反報告)
あや - はじめまして。実は昔から見てて定期的に「復活してないかなぁー？」と見に来ては、これまでの作品を何度も読み直していた者です。生きていたらこんな良い事もあるんだと思うほど嬉しいです！これからまた新作含めて読ませていただきます！ (10月16日 4時) (レス) @page38 id: 2e88291e02 (このIDを非表示/違反報告)
あげは(プロフ) - aracick5963さん» aracick5963さん、はじめまして。コメントありがとうございます(*´꒳｀*)そしてただいまです！ちょっと移行に時間かかってますが、お巡り智と恋を引き続きお楽しみいただければと思います♪ (10月11日 20時) (レス) id: bee9bda467 (このIDを非表示/違反報告)
aracick5963(プロフ) - はじめまして、そしておかえりなさい。久しぶりにあげはさんに会えて嬉しいです。刑事じゃなくておまわりさん智。良きです。でもペンキ屋も好き🥰。これからも楽しみにしてます。 (10月11日 10時) (レス) @page16 id: 4219fda75e (このIDを非表示/違反報告)
あげは(プロフ) - おーちゃんさん» ビデオ通話智やっばいですよね！眠そうで可愛いのに色男出してきたり正統派出して来たりもう……ね(伝われ)。第1章にコメントいっぱいありがとうございました\(*´ᗜ`*)/ 感動の再会(笑)、とっても嬉しかったです♡ (10月8日 23時) (レス) id: bee9bda467 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あげは
| 作成日時：2023年9月21日 16時
