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伝えられたことに満足してスマホを仕舞おうとしたら、
既読がついた後で、すぐにぽんって吹き出しが増えた。
―― 知ってる
思いがけない返信にどくんって心臓が波打って。
隣を見たら、倉橋くんと澤田はそんな私に気付かずに笑いながら話し続けてる。
―― 女子たちから解放されたんですか？
―― うぜぇから潤と逃げた
―― お疲れ様でした(笑)
―― あー
お互い校内にいるのに、隠れてLINEしてることにドキドキして。
―― ネクタイピンとカフス、付けてくれたんですね
―― まーね
―― 嬉しかったです
―― だろうね
―― 用具室にいるところを見つけてくれたのも…嬉しかったです
だるそうな顔を思い浮かべながら、夢中でスマホに指を走らせる。
少しして、最後の吹き出しに既読が付いたあと。
―― お前のことぐらい、どこにいても見つけてやるよ
「…っ」
幻かと思うほどの台詞にスマホを落っことしそうになって慌ててたら。
背後にふっと気配を感じて、スマホを胸に当てて窓の方へ振り返る。
「〜〜っ!!!???」
澤田「おわっ!! 櫻井先生」
私のすぐ後ろの窓の向こう側に立つ先生が、涼しい顔で私たちを見てる。
澤田「どっから出てくるんすか」
翔「窓だよね」
倉橋「どうしたんですか？」
翔「中庭からお前らが見えたから。まだ帰らないの？」
倉橋「あ…ユキを待ってて」
翔「そっか」
…本当にまた、見つけてくれた。
翔「…中山さん、目真っ赤だけど大丈夫？」
「え…ぁ」
澤田「式の間中顔ぐっちゃぐちゃだったもんな(笑)」
「うるさいっ」
翔「卒業証書貰いに行く時、階段昇れるか心配になった(笑)」
「…先生っ」
翔「だってふらふらだったよ？(笑)」
からかうように言って、澤田と目配せして楽しそうに笑ってる。
だってしょうがないじゃんっ。
先生の、マイクを通した綺麗な声に「中山A」って呼ばれただけでもう胸がいっぱいなのに。
教員席の前を通ったら、松本先生と杉崎先生がものっすごい優しい顔して私を見てるし。
松本先生なんて、唇だけで「おめでとう」って言ってくれるし。
そこに辿り着くまでに泣きすぎてフラフラなところに持って来て、
舞台下で私を待ってる先生が、これでもかってくらい優しい顔で微笑むから。
私の顔がぐちゃぐちゃになっちゃったのは、しょうがないんですっ。
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
