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スマホ片手に写真をねだる女子たちにもみくちゃにされながらも、それに笑顔で応えて。
中庭から校門の方へ流されていく先生たちをぼーっと眺める。
…でもね、あんなアイドルみたいに爽やかに笑ってる頭の中で。
「うるせー貧乳ども。ひれ伏せ俺様に」って、思ってるんだよ。
見えなくなっていく先生集団を見つめながら、ふふって笑う。
由梨がトイレ行ってくるって言ってその場を離れて、2人で話し始めた倉橋くんと澤田の横で、窓枠にとんっと背中を預ける。
目の前の教室から、だんだんと人が減って。
騒がしかった廊下が、少しづつ静かになって行く。
私の高校生活の終わりまで。
もう本当に、あと少し。
私の思い出す学校の景色の中には、いつも櫻井先生がいる。
スローガンの掲げられた下駄箱。
長く続く廊下の、1つ1つ。
古いパソコンの置かれた執務室にも。
鍵の壊れた用具室がある体育館にも。
視聴覚室にも、職員室にも、保健室にも。
いつもは明るいはずの、薄暗い教室の中にも。
いつだってそこに、先生がいる。
―― "こうやって、いちいち腹立つのも死ぬほどうざってぇから"
―― "もうなってやるよ。…お前が卒業するまでの、期間限定彼氏"
あの日先生の腕の中で聞いた、有り得ない言葉。
卒業まででも、彼女にしてもらえるだけで奇跡みたいだったけど。
もしも期間限定のままだったら、今日で私たちの関係は終わってた。
もしもあの時諦めてたら。
今日から、先生と離れ離れの人生が始まってた。
そう思ったら、わーって胸がいっぱいになって。
スマホを取り出して、LINE画面を開く。
1年半の間に少しづつ少しづつ増えていった、私の秘密の宝物に。
―― 好きです、櫻井先生
そう打って、送信ボタンを押した。
この学校にいるうちに、どうしてももう一度伝えたくて。
櫻井先生に恋した自分を、ちゃんと残したくて。
生徒としても、1人の女子高生としても。
私は、櫻井先生が好きです。
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
