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「私が最初に好きになったのは、そういう櫻井先生だったんです」
だるそうにハンドルに片腕を預けて、フロントガラスを見つめてる先生を視界の隅に留めて。
体育館裏で奈緒ちゃん先輩を抱き寄せた時の、めんどくさそうな顔を思い出す。
私が好きになった先生は。
最初から、"みんなの知らない櫻井先生" だった。
翔「その割にはいちいち過剰反応するよね」
「先生がどS過ぎるんです」
翔「それが望みだろ」
「"ひれ伏せ俺様に？"(笑)」
翔「足蹴にされて地面に頭擦り付けられたいわけね」
「そこまで言ってません(笑)」
翔「どっちなんだよめんどくせーな」
「中間はないんですか？」
翔「あ？」
「ハーフ＆ハーフみたいな」
翔「ふざけんな俺はピザ屋じゃねぇ」
「(笑)、ごめんなさい」
くすくす笑う私に、「笑ってんじゃねーよ」って先生が舌打ちする。
こういうなんでもない時間を、先生と過ごせることが嬉しすぎて。
ただただ幸せで、ふわふわする。
「とっとと行けよとろくせーな」って呟く声も。
苛立ったようにとんってギアを叩く長い指も。
全部かっこよくて、くらくらする。
どSな先生にも結局どろどろに溶かされて、緩んでいく頬っぺたを直しもせずにじーっと先生の大きな手を見つめてたら。
ギアを掴んでたその手が、不意にくるっと反転した。
顔を上げて横を見たら、首を傾げて私を見てる先生と目が合って。
翔「どうぞ？」
ふんって薄く笑いながら、くいっと指を曲げて私を呼ぶ。
「…っ」
その手のひらに、自分の手を重ねて。
ゆるく折れ曲がる先生の長い指が、私の手を包んだら。
ただただ幸せで…、ふわふわする。
きゅぅぅぅって狭くなる胸を外に逃がすみたいに、繋いだ手をぎゅぅぅぅっと握る。
信号待ちで停まった途端、その手をぐいっと引っ張られて。
よろめいた私の身体を受け止めるみたいに、先生の唇が私の唇に触れる。
「…んっ」
どくんって鳴る鼓動と、ちゅって唇が重なる音が耳の中で混ざって。
全部が、くらくらする。
唇が離れたら、胸に凭れる私を見下ろして。
ふって、斜めに口角を上げて。
翔「ハーフ＆ハーフ？」
「……ちょっと、甘さが強過ぎです」
私の呟きに、呆れたようにふんっと鼻を鳴らして。
「生意気言ってんじゃねーよくそガキ」って、先生が、私の頭をくしゃっと撫でた。
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
