▼386 Side.Kazunari ページ18
「先生ひさしぶり」って笑って、潤くんが缶ビールを墓石の前に置いて。
奈緒ちゃんがしゃがみ込んで両手を合わせるのを、優しい目で見てる。
美雪「…カズ」
和「…ん」
もう涙目限界な、俺の大事な不器用さんの手をぎゅっと握って。
それぞれ寄り添い合う4組のカップルに、ふふっと勝手に頬が緩む。
まーくんのネーミングセンスはいただけないけど。
今日だけは "純愛組"って呼ばれても、許してあげましょうか。
奈緒「…大野先生のTo-Be、きっと叶ったよね」
立ち上がった奈緒ちゃんが、潤くんを見上げて小さく呟いた。
潤「…そうだな」
奈緒「うん」
うるうるしてる奈緒ちゃんの頭をくしゃくしゃっと撫でて。
潤くんが優しく微笑む。
和「To-Be？」
潤「…うん」
雅「大ちゃん先生がなんか言ってたの？」
潤「先生が俺にくれた言葉だけど、きっとみんなに対して同じこと思ってたと思う。…同じことを、願ってたと思う」
和「同じこと？」
潤「先生は、そういう先生だから」
何かを思い出すように俯いて笑う潤くんの目が、ゆらっと揺れる。
美雪「先生のTo-Beって…？」
潤・奈緒「「……」」
美雪の問いかけに、2人で顔を見合わせて。
ふっと微笑み合うと、潤くんが奈緒ちゃんの肩をぐいっと引き寄せた。
顔を上げた2人が、透き通るような瞳で俺たち1人1人を見つめて。
2人の唇が、一緒に動く。
潤・奈緒
「「君と、君の愛するものすべてが
君と、君の愛するものの未来が
いつだって、なんだって、素晴らしくあるように」」
あの気の抜けた声が。
あの、ふにゃっとした笑顔が。
耳の奥で、頭の中で、俺たちに語りかける。
まーくんが、わぁぁぁって子供みたいに泣き出したのと同時に。
俺たちを見下ろす、真っ青な空の上から。
ざぁっと優しく吹いた風が、満開の桜を揺らして。
舞い落ちるピンクの花びらが、ふわっと俺たちを包んだ。
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
