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コ「櫻井様、おかえりなさいませ」
エントランスを颯爽と横切る先生に、コンシェルジュさんがにこっと笑いかけた。
翔「ただいま」
コ「ランドリーサービスが仕上がっておりますが」
翔「あぁ、悪いけど届けてくれる？」
コ「かしこまりました、のちほどお持ち致しますね」
聖母のような微笑みと、優美な礼。
超絶美人なコンシェルジュさんに見送られながら、高層階用のエレベーターに乗り込む。
「……」
翔「なんだよ」
「え？」
翔「なんか言いたそうな顔してますけど？」
「……コンシェルジュさん、綺麗ですね」
翔「Fカップね」
「…っ」
翔「あいつ俺に気があんだよ」
「…え」
翔「前、『職務違反覚悟です』つって電話番号渡された」
「……」
料亭の女将といい、金髪バニーといいコンシェルジュといい。
先生の周りには、なぜ美人(しかも巨乳)ばっかり集まるんでしょう。
そして、なぜみんな先生に気があるのでしょうっ(それはしょうがない)。
翔「櫻井様じゃなくて、ご主人様って呼ばせたいよね」
「はっ!?」
翔「『櫻井様、おかえりなさいませ』より、『おかえりなさいませ、ご主人様』のがそそるだろ」
にやっと口元を歪める、色気プラスな悪魔の微笑み。
…先生。
それ、とても婚約者に向かって涼しい顔で言うセリフではありませんけども。
「おかえりなさいませご主人様」な光景を容易に想像できる自分が憎いですっ。
記念すべき初訪問なのに、のっけから全力で項垂れていたのも束の間。
地上32F、マンションなのにポーチ付きの玄関から入ったそこは。
想像を遥かに超える、まさに別世界。
翔「その辺適当に座ってろ」
スーツのジャケットをダイニングの椅子に投げ出して、ネクタイを外しながら先生が言う。
…いやあの。その辺って、どの辺ですか？
その巨大なアイランド型キッチンの、お洒落なバーカウンターみたいなスツール？
1人暮らしのはずなのになぜか6人掛けの、ぴっかぴかに磨かれた黒塗りのダイニングテーブル？
1人暮らしのはずなのになぜかL字型の、黒革張りの特大ソファ？
それともそれとも。
ウィーンって自動で開いていくカーテンの向こう側に見える。
キラキラ夜景が売りの高級レストランのテラス席ですか？みたいな。
その広すぎるバルコニーの、デッキチェアに座ればいいでしょうかっ!?
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
