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振り向きざまに私を見てた目が、一瞬驚いたように丸くなって。
小さく首を振って、ふっと息をつく。
父「…相変わらずの跳ねっ返りだな」
翔「…ですね」
父「お前には、このくらい猪突猛進な子が似合いってことか」
翔「煩わされるのが好きみたいで」
父「ふん、惚れた弱みだろう？」
翔「…まぁ、そういうことです」
「…っ」
父「俺はお前の惚気を聞きに来たんじゃないんだよ。好きにやってくれ」
鬱陶しそうに手を払いながら呆れたように笑うお父さんを見て、
俯いた先生が、ふっと頬を緩める。
さっきお父さんは先生のことを、周りには猫被ってるとか、生意気な男だって言ってましたよね。
それって、お父さんは本当の先生を知ってるってことで。
冷たくて無関心なように見えても、ちゃんと先生のことをわかってるってことですよね。
ちゃんと、お父さんだってことですよね。
立ってるだけで誰もがひれ伏してしまいそうなその姿の裏にはきっと、先生のお母さんしか知らない姿があって。
見えないだけで、その想いは全部先生に繋がってる。
翔「お父さん」
父「…なんだ」
翔「Aとのことの他に。もう1つ、言っておきたいことがあります」
父「前置きはいい。早く言え」
またいつもの無表情に戻って、冷たく言い放つ。
翔「俺、教師を辞めてもあいつらとは縁を切りませんから」
父「……」
なんの感情も見えないお父さんの目を、真っ直ぐに見返して。
翔「俺は父さんを尊敬してるし、父さんが築き上げた会社を継ぐって気持ちは変わらない。でも俺は、会社を継いでもあいつらとの付き合いを辞める気はありません。
俺はずっと、父さんを超えたいと思ってた。父さんみたいになんでも1人で出来るようになって、いつかあなたを超える人間になるんだって、ずっと思ってました。
…でも、俺は父さんとは違うから。父さんとは違ったやり方で生きて行く」
その目を見据えたまま。
先生が、にやっと斜めに口角を上げた。
翔「俺は、自分が信じられるやつらと一緒にいる。…それで、いつかあんたを超えてやる」
その言葉に、また少しだけ驚いた顔をして。
先生とそっくりに、ふんっと鼻を鳴らして。
父「…楽しみにしてるよ」
悠然と身を翻えして去って行く前のその目は。
ほんのちょっとだけ、優しい父親の顔に見えた。
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
