◆80 Side.You ページ14
そんなこと、あるわけないと思ってた。
だって、私は先生が好きで。
カズだって、先生が好きで。
踊り場で私を助けてくれた日も。
卒業式の日も。
あの…イベントの夜も。
カズはいつもみたいに微笑んで、私たちを見てたから。
和「…あーぁ、言っちゃった」
「……」
和「本気だってわかったら、困らせるだけだってわかってから。ずっと言わなかったのにね」
「…っ」
和「お前がバカみたいに死のうとかするから…言っちゃったでしょ」
「カズ…」
それしか言えない私の髪を撫でて。
ふって薄い笑い声と一緒に、項垂れてた頭を持ち上げる。
和「弱ってる時につけ込んじゃうとか、かっこわるいじゃん俺」
「…っ」
頬に流れた涙を、カズの左手が優しく拭う。
和「俺じゃない人のこと想って泣いてる女に迫るとか…かっこわるいじゃん？」
そう言って、ふふって笑ったカズも泣きそうな目をしてて。
その目は、あの日この屋上で見た。
今にも消えてしまいそうな…寂しげで、儚い瞳。
涙を拭った手が、私の頬を包む。
綻んでた口元から、不意に微笑みが消えて。
その瞳に吸い込まれそうで、思わず目を伏せた。
和「A…」
呼び終わるのと同時に、カズの唇が私の唇に触れて。
びくっと震えた身体が、強い力で抱き締められる。
その唇は、あの時よりも温かくて。
優しくて。
顎を引いた私の唇を追いかけるように、薄く触れてただけの唇からふっと舌が伸びて。
唇に触れる、冷たい金属の感触。
―― "それに、女の人いっぱいいるでしょ？"
―― "あー…"
―― "いるね"
突然頭に鳴り響いた声にどくんっと心臓が跳ねて。
「…ゃっ」
反射的に、目の前の胸をどんっと押して離れた。
和「……」
「あ…」
一瞬驚いたように私を見たカズの瞳が、ふっと寂しそうに揺れて。
和「…言わないの？」
私から目を逸らして、うっすらと口元を歪めて笑う。
―― "最っ低"
「…っ」
和「いいよ。言えば」
「……」
和「…もうあんなことしないって、言ったのにね」
「…カズ」
和「約束破って、ごめんね」
「…っ」
和「…行っていいよ」
地面を見つめたまま、低い声で呟く。
私は、あの日と同じように。
丸く光る月と、カズを屋上に残したまま。
逃げるように、ドアへと駆け出した。
◆81 Side.You→←◆79 Side.You 11/4
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1630人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あげは(プロフ) - レイ。さん» この章の絵を渡される場面が、跳べシリーズの中で一番キツいところだと私は思ってて。そこからみんなに支えられて気持ちに気付くまでが、AIで私が伝えたかったことでした。色んなことを感じていただけてすごく嬉しいです。BTまであと少しですよっ!!(笑) (2016年8月21日 23時) (
レス) id: 02b4f5b3a5 (このIDを非表示/違反報告)
レイ。(プロフ) - もう最高過ぎて最高過ぎて。読む手が止まりません！おまけもすごく良かったです！続き読んできたいと思います！ (2016年8月21日 18時) (レス) id: 525ab02d23 (このIDを非表示/違反報告)
レイ。(プロフ) - いつまでも忘れられない主人公ちゃんが可哀想だなって思いつつも皆で助けてあげようとする姿に胸が打たれて泣きそうになったりもう泣いたり心ん中がほっこりしたりと感情が豊かに動きまくってます笑 不器用ながらも大切な事に気付かせようとしてくれてる櫻井先生も良い (2016年8月21日 18時) (レス) id: 525ab02d23 (このIDを非表示/違反報告)
あげは(プロフ) - ゆゆさん» なんかかっこよかったので全然気にしないで下さい(笑)。AIは、私の長編の中でも特に苦しいお話なので、泣かせてばかりでごめんなさい(ノ_＜。) 現在編からBTへ。またこれからも、跳べメンバーをよろしくお願いしますっ(*´∇｀*) (2016年2月21日 0時) (レス) id: 02b4f5b3a5 (このIDを非表示/違反報告)
あげは(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、初めまして。コメントありがとうございますっ!! 私のお話を見つけていただいて、ありがとうございました(*´ー｀*) そしてもう…キミ花も跳べもまぁ長くて苦しいことの多いお話なのに、そんな風に言っていただけて感激です(T△T) "あげはの世界"って (2016年2月21日 0時) (レス) id: 02b4f5b3a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あげは
| 作成日時：2015年11月1日 0時
