◇142 ページ5
杉崎「…大丈夫？」
「はい、すみません」
杉崎「私に謝ることはないけど」
杉崎先生も、櫻井先生に負けず劣らず無表情だけど。
もう前みたいに、苦手だなって思う雰囲気は無くて。
カズさんの言ってた "不器用もここまでいくと芸術品" の意味が、今はわかるような気がした。
「あ…」
先生の左手の薬指に光る指輪。
思わず見つめた私に気付いて、先生がそれに優しく触れた。
杉崎「潤くんに、嵌めとけばって言われたの」
「え？」
杉崎「ずっと、出来なかったの。先生がいなくなってから、ずっと…」
「……」
杉崎「でも、佐藤さんに見られたあの日。潤くんに言われたの。
『思い出しても苦しくならないようにするのが、俺たちの役目じゃないの？』って。
『苦しくなくなるまで嵌めておけば、いつ前に進めるようになるかわかるよ』って」
銀色の輪の真ん中に、6つの小さな花が均等に散りばめられた。
立て爪の、綺麗な指輪。
それを見つめる杉崎先生の目は、その花に包まれたダイヤみたいにきらきらしてて。
その綺麗さと儚さに、きゅうっと胸が詰まる。
杉崎「潤くん、言ってたよ。『あいつは昔の俺みたいに迷ってたけど、その中で進む道を見つけたから。俺はそれを、ずっと応援してやりたい』って」
「…っ」
杉崎「私の先生ね。潤くんのこと、大好きだったの」
「え…」
杉崎「よく聞かされてた…潤くんの話」
「そうなんですか」
杉崎「口数の多い人じゃなかったけど。好きなものの話をする時だけは、子供みたいな顔になって」
優しい顔をしてた先生の目が、急にゆらっと揺れて。
ふいっと首を横に振って、目を伏せる。
杉崎「こんな風に話せるようになるまで、6年もかかってるの。…それでもまだ、だめだね」
「先生…」
杉崎「ごめんなさい。私の話を聞きに来たわけじゃないのにね」
「いえ、いいんです」
いくらでも聞いてたいって、本当に思った。
きっと松本先生も。
あの時、そう思ってたんだ。
杉崎「私の大好きな人が大好きだった彼が、悪い人なわけないんだから。
信じて、頑張りなさい。あの人の意思を継いでる潤くんなら、大丈夫。
今は逢えなくても。あなたの大事な人は、確かにこの世界にいるんだから」
「…っ、…はい」
頷いた私を見た杉崎先生が。
「また辛くなったら、ここに来なさい」って、ふわっと笑った。
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nori(プロフ) - ずっと主様の文才とかいろいろに感動しっぱなしだった所で「うるせーばばぁっ」「きぃぃい！」のところで不意打ちすぎて笑ってしまいました笑ギャグも入れてくる辺り最高です笑 (10月9日 19時) (
レス) @page35 id: 415de435f6 (このIDを非表示/違反報告)
あげは(プロフ) - レイ。さん» あのシーンは、くそほど切ないところに突如ふざけたエピ投入でBT櫻井Loversが阿鼻叫喚でした(笑)。櫻井先生になら、あんなこと思われててもいいから壁ドンされたい｡:+((*´艸`))+:｡ おまけへの感想も嬉しかったです。ありがとうございました☆ (2016年8月20日 23時) (レス) id: 02b4f5b3a5 (このIDを非表示/違反報告)
レイ。(プロフ) - 最後のおまけもとて良かったです！(笑) (2016年8月19日 22時) (レス) id: 525ab02d23 (このIDを非表示/違反報告)
レイ。(プロフ) - 蜘蛛の巣女をとっちめたゲスさMAXな櫻井先生のシーン面白過ぎました 笑 ふざけたシーンもあって笑い死ぬかと思いました 笑 和くんも雅紀くんもゲスさMAXな櫻井先生も杉崎先生も優しすぎる！松本先生も免許取消なって本当に良かった！では最終話読んできたいと思います！ (2016年8月19日 22時) (レス) id: 525ab02d23 (このIDを非表示/違反報告)
あげは(プロフ) - ハルさん» あぁぁぁ…ありがとうございます(ノ_＜。) もうなんか、ありがとうございますしか言葉がありません。書けてるのはみなさんのおかげです、こちらこそ大好きですありがとうございます<(_ _*)> (2016年5月23日 21時) (レス) id: 02b4f5b3a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あげは
| 作成日時：2015年9月5日 4時
