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優希は散りかけの桜並木の中を歩いて学校まで向かう。



今日は講堂での入学式だが、清岡は当然来ない。

資料を受け取り、クラスを確認する。

D組の最後に、和田優希の名があった。



「…冗談かな…」


中学校も卒業していない優希が?

推薦という形で行った面接では、ほとんど口を開いていない。高校になど通いたくなかったのだ。

けれど受かってしまった。

それは当然のように優希の力ではない。

もし面接に行かなくたって優希は今ここにいるだろうから。



「……きみが、和田優希くん?」



席にやって来たのは、髪の毛を品のある茶色に染めた、優しげな男子生徒だった。


「俺、松井奏。E組。きみのことは父に頼まれたから、何かあったら来てね」


多少のことでは動じない優希も、さすがに耳を疑った。

「父…?」

「うん、父」

「……清岡さんは…娘さんしか…」


奏が笑った。


「俺はね、隠し子」


「…隠し子?」


「そう。戸籍上は他人だ。きみは?」


「僕はただ……拾われて…」


「ああ、道理で初対面だね」


「…清岡さんには、隠し子が沢山いるの?」


「いや?若い女を飼ってたこともあったけど、今はいない。

ましてや、君みたいな燕は初めて」


「ツバメ?」


「金持ちに養われてる若い男のことだよ、

普通、女性が飼ってる時に言うんだろうけど」




それは、吐き捨てるような口調だった。

式典が始まろうとしている。



奏はじゃあ、と行ってしまい、優希は呆然と椅子に腰掛け直した。



愛人に隠し子にさらなる愛人。優希は何番めなのだろう。


一番でなければいい、誰かの一番なんて、苦しいものだと思う。

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LIKKA(プロフ) - わたがしさん» お返事遅くなり本当に申し訳ありません!ありがとうございます(TT) (2017年8月14日 9時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)
わたがし - これからも頑張ってください!応援してます! (2017年7月24日 22時) (レス) id: 35ef0e40d0 (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - わたがしさん» 迷惑なんてとんでもないです。本当に嬉しいです。ありがとうございます!(><) (2017年7月24日 21時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)
わたがし - 初めまして!すごく感動して、最後辺りでボロ泣きしてしまいました。完結してから読んでいるのでコメント出すのご迷惑かな?と思ったのですが、感動し過ぎて書いてしまいました…。 (2017年7月22日 22時) (レス) id: 35ef0e40d0 (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - しぃかさん» しぃかさん!またコメントくださるなんてとっても嬉しいです(o>ω<o)作間くんわたしも大好きです(TT) 本当にありがとうございました! (2017年5月30日 18時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:LIKKA | 作成日時:2017年5月6日 20時

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