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翌日、優斗は龍斗の具合が悪そうだったので保健室へと彼を送り届けていた。

隣のベッドのカーテンは閉まっていて、誰がいるかは見えない。


だが、

「飛貴くん」

龍斗が一言小声で呟いた。

優斗は特に驚かない。
龍斗は長年付き合いがある人なら、気配で分かるらしい。


「…おはよー」

「ん?ああ、作間と優斗か」

彼は寝転がってマンガをめくっていた。

優斗は昨日のネットニュースを頭の中で反芻して笑顔を作る。


「飛貴がサボりなんて珍しいな」

「うん。でしょう?」


突っ込んで欲しくないんだ、と優斗は察した。


「龍斗がちょっと今日体調悪いから、なんかあったら俺にラインして」

「あ、いいよいいよー。りょーかい」

「あと飛貴。お前さあ、まだ確定じゃねえんだから、そう落ち込みすぎんな」


優斗が出て行くと、龍斗は飛貴の顔をじいっと見た。

龍斗は家で携帯やテレビから隔離された環境に置かれているので、飛貴のことは何も知らない。


「…優斗……」


「飛貴くん」


「ん?」

龍斗は飛貴の頬を手で優しく包んだ。


「泣くのは我慢しちゃだめ」


「…え?俺、そんな顔してた?」


「飛貴くんの目が、泣きたい、って言ってるよ」


龍斗がそう言うと、飛貴は顔を歪めて泣き出した。


「ごめん…ごめん、俺、もうだめだ」


「んー?飛貴くんはだめじゃないよ。
勉強もできるし、体育もできるし、おもしろくて、カッコいい。それに…」


龍斗は照れたように笑った。


「僕にも、優しい」


龍斗にとってそれが何よりも比重が大きかった。

自分の家が変なのは、もうわかっていた。


5代続けてG学院というコネ中のコネ入学。勉強は苦手だし、体が弱くておとなしい。
だから初等科のときから友達は多くなかった。


飛貴は自分と正反対で、容姿端麗、文武両道、初等科2年の時には学年全員と友達になっていた。

なのに、龍斗にも優しかった。



「ね、覚えてる?中2のときの」


「……なんだっけ?」


「ほらね。飛貴くんは、優しくしても、覚えてないくらい、当たり前になってるんだよ。

だから、ダメじゃない」


龍斗は、あの夏を思い出していた。

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LIKKA(プロフ) - わたがしさん» お返事遅くなり本当に申し訳ありません!ありがとうございます(TT) (2017年8月14日 9時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)
わたがし - これからも頑張ってください!応援してます! (2017年7月24日 22時) (レス) id: 35ef0e40d0 (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - わたがしさん» 迷惑なんてとんでもないです。本当に嬉しいです。ありがとうございます!(><) (2017年7月24日 21時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)
わたがし - 初めまして!すごく感動して、最後辺りでボロ泣きしてしまいました。完結してから読んでいるのでコメント出すのご迷惑かな?と思ったのですが、感動し過ぎて書いてしまいました…。 (2017年7月22日 22時) (レス) id: 35ef0e40d0 (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - しぃかさん» しぃかさん!またコメントくださるなんてとっても嬉しいです(o>ω<o)作間くんわたしも大好きです(TT) 本当にありがとうございました! (2017年5月30日 18時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:LIKKA | 作成日時:2017年5月6日 20時

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