↓ ページ9
｢ねぇ、シャークんさんって、また家に来る？｣
｢まぁそのうち遊びに来るとは思うけど｣
｢じゃあ次来る時は絶ｯ対に前もって教えて！お、お礼返すの！今日、お礼すら言えなかったから……！｣
お兄ちゃんお願い！といつもの癖で、きゅるんと上目遣った。兄はうーんと唸りながらも、｢仕方ないなぁ……｣とその場でLINEを開いていた。さすが私の兄、よく分かっている。思い立ったらすぐ行動、出来ればなるべく早くお願いしたい。
しばらくして返事が来たのか、兄は｢来週の土曜日なら空いてるって。それでいい？｣と私に聞いてきた。こくこくと頷くと、兄はまたスマホのキーボードを打ち始めた。
｢ちなみにさ、コンビニ行くけどなんかいる？って俺聞いたじゃん。あれシャークんが言ってたからね｣
｢え！？｣
｢妹ちゃんなんかいるかな、って気にしてたの。自分で聞けば？って言ったら、それはちょっと恥ずいわって。あぁちなみに、Aがなんで先に言ってくれないの〜って怒ってたのも、玄関で聞いてたみたいだけど｣
｢えぇ……｣
ぐったりと項垂れていると、兄がスマホを向けてきた。しぶしぶトーク画面を見ると、そこには『じゃあ来週の土曜日またお邪魔するね』と彼が返信していた。
来週の土曜日、つまり一週間後である。
｢まぁ頑張ってね。お兄ちゃんは応援してるよ｣
｢うぅ〜……｣
兄にひらひらと手を振られ、ようやく重い腰を上げた。部屋を出て、いつもなら言わない｢おやすみなさい｣の挨拶を交わした。
隣の部屋の扉を開けて、ベッドに倒れ込む。
今日は散々な一日だった。まさか兄の友達を好きになる日が来るなんて……。そんなことを思いながら、まだうるさい心臓に手を当てて目を瞑った。
.
一週間というのは、こんなにも経つのが早いものだったっけ？
そんな間抜けなことを考えながら、鏡の前に立って最終チェックをする。髪型よし、服装も……迷ったけどこれでよし。お礼の準備も完璧。今日の私に隙などない。一週間前は突然の訪問だったから、リビングに閉じこもってコタツから出られない羽目になったけれど、きちんと準備した私はちゃんと可愛い。兄のお墨付きである。
どきどきしながら、自分の部屋でその時を待っていた。今日は両親も家に居るので、前のようにリビングのコタツに潜ったりはできない。代わりに、彼が来たら兄が呼んでくれるらしい。こういう時の兄の段取りの良さには感謝しかない。協力してくれてありがとう、と密かに思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空羽(プロフ) - ねこ娘さん» 初めまして。私は今回が初めての企画でして不安だらけだったのですが、参加者の方々に助けられながらなんとか完成できたものなので、こうしてコメントで伝えて頂いて本当に嬉しいですし、企画して良かったと心から思いました…。読んで頂きありがとうございました！ (2021年9月3日 15時) (
レス) id: d2cb5de424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして。まず感謝をお伝えしたいです、素敵なお話をありがとうございました…泣 皆様の作り出すお話、メンバーと作者様の個性に溢れていて一筋縄ではいかない展開に終始胸を打たれて唸っていました。タイトル回収も鳥肌立ちました、ごちそうさまでした… (2021年8月31日 9時) (レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：3人の文字書き | 作成日時：2021年1月16日 10時
