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その日の夜、いつもなら大人しく布団に潜るような時間。私は気付けば兄の部屋の前に立っていた。
コンコン、と小さく二回ノックした。兄はすぐに｢どうしたの？｣と扉を開けてくれた。
兄にこんなことを言う日が来るなんて、と思いながら視線を落とした。いつもの優しい兄の顔も、今日だけは見ることができなかった。
｢……えーと、ね｣
｢うん？｣
｢えっと……その、｣
｢……とりあえず部屋入る？｣
廊下は寒かったので、素直に部屋の中に入った。
兄の部屋はすっきりしている。
綺麗に片付いているという意味ではなく、もうすぐ家を出て一人暮らしをするらしいから、置かれてある物が少ない。パソコンやゲーム機など毎日使うものはまだ部屋に置かれているけれど、それでも他の物は減ったと思う。電車に乗ればいつでも会いに行ける距離らしいけど、いざこうして片付いた部屋を見ると少しだけ、ほんの少しだけ寂しいような気がした。
膝を抱えてクッションの上に座り、兄の顔を見ないようにして、ようやく私は口を開いた。
｢今日来てたのって、誰？｣
｢え？一緒に実況撮ってるシャークん、だけど｣
｢……そうなんだ｣
｢え？ん？ちょっと待って、どうしたのA、なんかあった！？｣
｢…………｣
顔を覗き込もうとしてくる兄から、ふいっと顔を背けた。
昼間のことを思い出してしまって、口元が緩んでしまうのを必死に抑えた。
｢困ったな、妹には手出すなよって全員に言っておいたのに……何されたわけ？｣
｢ち、ちがう！そんなんじゃなくて、｣
｢じゃあ何されたの？｣
いつもの調子なら｢え、お兄ちゃんなんか怒ってない？(笑)｣なんて茶化すのに、今回ばかりはそうともいかず。
何だか本気でよからぬ勘違いをしていそうな兄に、必死で弁明した。彼に言われたことや、ココア缶とコンビニスイーツを貰ったこと。そのココア缶を飲んだら、恋に落ちてしまったこと。今日起こったことを赤裸々に告白した。
｢そんなことがあったんだ、知らなかったよ。シャークん、何も言わずに普通に部屋戻ってきたし｣
｢うぅ………｣
｢そうなんだ、Aがシャークんをねぇ……ふーん、そうなんだ｣
今度はあからさまにニヤニヤしてきたので、膝に顔を埋めて唸った。
私だって、こんなはずじゃなかったのに！
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空羽(プロフ) - ねこ娘さん» 初めまして。私は今回が初めての企画でして不安だらけだったのですが、参加者の方々に助けられながらなんとか完成できたものなので、こうしてコメントで伝えて頂いて本当に嬉しいですし、企画して良かったと心から思いました…。読んで頂きありがとうございました！ (2021年9月3日 15時) (
レス) id: d2cb5de424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして。まず感謝をお伝えしたいです、素敵なお話をありがとうございました…泣 皆様の作り出すお話、メンバーと作者様の個性に溢れていて一筋縄ではいかない展開に終始胸を打たれて唸っていました。タイトル回収も鳥肌立ちました、ごちそうさまでした… (2021年8月31日 9時) (レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：3人の文字書き | 作成日時：2021年1月16日 10時
