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よく家に遊びに来る兄の友達は五人ほどいる。何となく遠目で姿を見たり、廊下ですれ違って会釈した時に顔を見た程度で、どの人を見ても｢あぁいつもの人達ね｣くらいにしか思っていなかった。兄も自分の友達に妹を紹介するのは癪なのか、特に会わせようともしなかった。
だから、初めてだった。兄の友達に、あんな風に話しかけられたのは。
残されたコンビニの袋をちらりと見た。おそるおそる中に入っている物を取り出す。まだ十分に温かいココア缶と、私がコンビニスイーツで買いがちな二つ入のマカロン。その二つを机の上に並べると、自然と笑みがこぼれた。見事に自分の好きなおやつセットだった。
冷めないうちに、とココア缶を開けて両手で持った。コンビニで買ったならもうぬるいだろうし、コイツは毎日見かけるので分かる。家の近所にある自動販売機で売っている、いつもお世話になっているココアだ。
ずず、とココアを一口啜った。相変わらず、いつもと変わらぬ美味しさだった。
もしかして、温かいココアを私に届けるために、わざわざコンビニの帰り道で買ったのだろうか。どうせコンビニに行くなら買い物はそこで全て終わらせてしまいたいものなのに、彼は寒い中わざわざ立ち止まって、温かいココアを自動販売機で買ったのだろうか。
そんなことを考え始めた途端、心臓がどきん！と跳ね上がった。
(あれ……？)
何故かまた、彼の遠慮げな笑顔が脳内に浮かび上がってくる。その間も心臓はバクバクとうるさくて、いても経ってもいられないような気持ちに駆られた。
もう一度ココアを一口飲んだ。今度はいつもより甘く、けれどどこかほろ苦く感じた。
何かおかしな薬でも入っているのかと思ってしまうくらい、ずっと心臓がうるさかった。
ひとまず落ち着こうと思い、マカロンの袋を両手で破った。チョコの方を先に手に取って半分齧った。いつも通りの美味しさに安堵したのは束の間、心臓は依然として高鳴り続けている。
そこで私はようやくあぁ、と思った。
過去にそれなりの経験はあるので、私はこの感情を知っている。
(……うそ、)
兄の友達に、温かいココア缶を貰っただけ。正確に言えばコンビニスイーツも貰ったけれど、たったそれだけで私は、兄の友達に……彼に、恋に落ちてしまった。
自分がこんなにも惚れっぽいだなんて信じられないけれど、頬の火照りがその真実を静かに物語っていた。
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空羽(プロフ) - ねこ娘さん» 初めまして。私は今回が初めての企画でして不安だらけだったのですが、参加者の方々に助けられながらなんとか完成できたものなので、こうしてコメントで伝えて頂いて本当に嬉しいですし、企画して良かったと心から思いました…。読んで頂きありがとうございました！ (2021年9月3日 15時) (
レス) id: d2cb5de424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして。まず感謝をお伝えしたいです、素敵なお話をありがとうございました…泣 皆様の作り出すお話、メンバーと作者様の個性に溢れていて一筋縄ではいかない展開に終始胸を打たれて唸っていました。タイトル回収も鳥肌立ちました、ごちそうさまでした… (2021年8月31日 9時) (レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：3人の文字書き | 作成日時：2021年1月16日 10時
