Love Potion！【sh】 ページ5
｢ねぇお兄ちゃん！友達連れてくるなら前日までに連絡してって、いつも言ってるんだけど！｣
私はいつもの部屋着のまま、兄･きんときをぎろりと睨んだ。
とても人前に出られるような格好ではなく、玄関からは見えないリビングの奥で怒りをあらわにした。
休日の真昼間。両親は二人仲良く出掛けていったが、休みの日くらいはゆっくりしたい派の私は家でダラダラする予定だった。
最低限の服で素足のままコタツに入り込み、リビングでテレビを見ていた。インターホンが鳴ったから、宅配便かなと思って兄を呼ぼうとしたのに、自分から玄関に向かっていくからもしやと思った。予想は見事にあたり、兄はまた休日に友達を家に呼んでいたのだ。
兄が友達とゲーム実況を撮っているのは知っている。
隣の部屋の兄が夜遅くまで友達と通話していて、一時期それが本当にうるさくて、本気で怒ったことがある。それからしばらくはやけに静かになって、私も少し怒りすぎたなと思ってもう一度兄と話し合い、なんとか和解した(当時は実況を撮っていることも知らなかったし)。
兄はゲーム実況を撮っていると私に打ち明けたあたりから、家に友達を連れてくることが多くなった。初めは｢お兄ちゃん友達いたんだ｣くらいに思って放っておいたが、いつも来るメンバーが大体決まっているのを見て、例のゲーム実況の仲間なのだと察した。そのことについて何か言うつもりはない。けれど、私にも家で過ごすという用事があるので、友達を家に連れてくるなら先に言っておいてほしいという話をした。随分前にした。何度もそう言っているはずのに、兄は未だに｢ごめん言うの忘れてた｣なんてへらりと笑うのだ。
｢ねぇ、なんか言い訳ある？｣
｢や、ないです……｣
｢だろうね！さっさと自分の部屋行って！私リビングに居るから｣
｢ごめん、ありがとう｣
兄は手を合わせて一言謝り、玄関の方へ走っていった。
リビングの扉を閉めて、ため息をついた。もう一度コタツ布団に潜り、だらりと体の力を抜く。
玄関の方から話し声が聞こえたが、大した声量ではなかったので会話の内容までは分からなかった。きっと、｢なんかまた怒られてなかった？大丈夫なの？お前の妹こわw｣｢いやまじでそれなw｣みたいな会話でもしているのだろう。
もそりと上半身を起こして、みかんを一つ手に取る。慣れた手つきで皮をむいて、口に運ぶ。そんないつもと変わらぬ休日だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空羽(プロフ) - ねこ娘さん» 初めまして。私は今回が初めての企画でして不安だらけだったのですが、参加者の方々に助けられながらなんとか完成できたものなので、こうしてコメントで伝えて頂いて本当に嬉しいですし、企画して良かったと心から思いました…。読んで頂きありがとうございました！ (2021年9月3日 15時) (
レス) id: d2cb5de424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして。まず感謝をお伝えしたいです、素敵なお話をありがとうございました…泣 皆様の作り出すお話、メンバーと作者様の個性に溢れていて一筋縄ではいかない展開に終始胸を打たれて唸っていました。タイトル回収も鳥肌立ちました、ごちそうさまでした… (2021年8月31日 9時) (レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：3人の文字書き | 作成日時：2021年1月16日 10時
