アングレカムをあなたに【kr】 ページ22
朝起きて、伸びをして、顔を洗う。着替えて、1度家を出る。朝はそろそろ寒いな、と思いながら、じょうろに水を汲んだ。
季節は秋。詳しい花の種類はそこまで知らないものの、コスモスという花だけは様々な色があるので覚えている。お母様のお気に入りなのだろうか。
お母様は、数ヶ月に1度、私のご飯を届けに来る時、一緒にこの庭の手入れをしていく。そして、季節の新しい種を撒いていくのだ。
「今日も、お母様とお父様はお忙しいのかな」
そろそろ手紙を書こうか、なんて思いながら私は庭に水をまいていく。
だからだろうか、それとも、そうではない、別の理由があったのか。
「ねぇ、この花、君が育ててるの？」
「っ！？」
その人が、柵をまたいだ私の横に立っていることに、気づかなかった。
反射的に臨戦態勢に入った私を見て、隣の彼はきょとんとした顔をしている。けれど、彼が只者ではないことなんて、すぐに分かった。だって、足音がしなかったのだ。私は、お母様やお父様に、あんなに訓練させられていたのに。
「…えーっと、何か、勘違いしてない？」
「してません！ここは、私の家ですから」
「別に、俺は君に危害を加える気はないんだけど」
そんなの、なんとでも言えるのだ。私が警戒したままなのを察すると、彼は困ったように自分の髪を掻く。
彼の金髪は、朝の木漏れ日を浴びてきらきらと輝いていた。そして、その瞳も同じように黄色に輝いている。
また、彼の服はこれまで見たことも無いようなものだった。まだ上着は白衣の黒いバージョン、とでも表現できるが、中の服はどう表現すれば良いのかさえ分からない。怪しいこと、この上ない。
「ただ、ここの花が綺麗だなぁ、と思ってさ。君が育ててるの？」
けれど、花を褒めてもらえるのは自分が思っていたより嬉しいことだったのかもしれない。その言葉を聞いて、上がりそうになる口角を抑えるのに必死だった。お父様は言わずもがな、お母様もその季節の花が枯れる頃に帰ってこられるし、ここに学校の友人を連れてくることもないから、庭は私とお母様しか知らないもので、褒めてもらえたことなどないのだ。
「…褒めて頂き、ありがとうございます。確かに育てているのは私ですが、ここの庭は母のものです」
「そんなに睨まなくても良いと思うんだけど…」
「だって、あなたの顔も、服すら、見たことありません。お名前はなんと言うのですか？」
「俺？俺は、きりやん。君は？」
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空羽(プロフ) - ねこ娘さん» 初めまして。私は今回が初めての企画でして不安だらけだったのですが、参加者の方々に助けられながらなんとか完成できたものなので、こうしてコメントで伝えて頂いて本当に嬉しいですし、企画して良かったと心から思いました…。読んで頂きありがとうございました！ (2021年9月3日 15時) (
レス) id: d2cb5de424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして。まず感謝をお伝えしたいです、素敵なお話をありがとうございました…泣 皆様の作り出すお話、メンバーと作者様の個性に溢れていて一筋縄ではいかない展開に終始胸を打たれて唸っていました。タイトル回収も鳥肌立ちました、ごちそうさまでした… (2021年8月31日 9時) (レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：3人の文字書き | 作成日時：2021年1月16日 10時
