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廊下で上着や手袋を脱いでいると、ようやく彼が買い物袋を手に持って家の中に入ってきた。玄関まで駆け寄って、持つよ、と手を伸ばす。案の定断られてしまい、頬を膨らませながら持ち手を半分奪って引っ張った。
買い物袋をキッチンに置くと、ふいに手を取られた。
｢まだ透けてる｣
｢きんときの手あったかいから、すぐ戻るよ｣
｢俺はそれでも心配なの｣
｢……うん｣
手に寄せられた彼の唇が熱くて、頬が緩んだ。
嬉しそうにしているのがバレて、彼はむっとした表情になった。それでも私の頬はゆるゆるで、目を細めて微笑んだ。
｢俺、真剣なんだけどなぁ｣
｢ふふ、うん、ありがとう。ほら、もう手も元通りだよ。雪は降ってなかったから、顔まで消えなくて良かった｣
幸せそうに微笑む私とは真逆に、彼は今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。
｢そういうこと言わないで。俺、すごく不安になるんだよ。目を離した隙に、Aが居なくなってるかもって。今日みたいなことが続いたら、俺の心臓も持たないよ。お願いだから、勝手に消えたりしないで。夏になったら海で結婚式挙げるんでしょ、新婚旅行だって行くんでしょ、お願いだから、ずっとここにいてよ……｣
痛いくらいぎゅうっと抱きしめられる。彼の背中に手を回して、慰めるように小さく相槌を打った。
彼の体温が夏の日差しのように気持ちよくて、静かに目を伏せた。
｢だいじょーぶ、私はここにいるよ。もう勝手に外に出たりしないから、ね｣
｢そんなこと言って、去年も勝手に一人で散歩してたでしょ。どうしても外の空気吸いたい時は俺に言ってよ。お願いだから、隣にいて｣
｢うん、うん、分かったから。そんなに強く抱きしめられると、潰れちゃうよ｣
そう言って笑うと、彼は少しだけ力を緩めてくれた。
顔を上げて、ん、と唇を差し出せば、彼はすぐに私にキスを落とした。少し角度を変えながら、何度もちゅ、ちゅ、と軽いキスを交わす。可愛いなぁ、なんて口にすればきっと怒られちゃうだろうな。
冬は嫌いだ。
寒いし、身体も弱るし、雪が降るから。
けれど冬になれば、彼はいつも私の隣に居たがる。夏の日よりもずっとずっと一緒に居られるし、毎日寄り添って同じ布団で寝られる。彼の手料理を連日味わえるのは冬の間だけだし、一緒にお風呂に浸かるのだって心地良い。
そんな時間がとても、とても愛しいから、案外冬も悪くないと思った。
- もう少しだけ、このままで。
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空羽(プロフ) - ねこ娘さん» 初めまして。私は今回が初めての企画でして不安だらけだったのですが、参加者の方々に助けられながらなんとか完成できたものなので、こうしてコメントで伝えて頂いて本当に嬉しいですし、企画して良かったと心から思いました…。読んで頂きありがとうございました！ (2021年9月3日 15時) (
レス) id: d2cb5de424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして。まず感謝をお伝えしたいです、素敵なお話をありがとうございました…泣 皆様の作り出すお話、メンバーと作者様の個性に溢れていて一筋縄ではいかない展開に終始胸を打たれて唸っていました。タイトル回収も鳥肌立ちました、ごちそうさまでした… (2021年8月31日 9時) (レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：3人の文字書き | 作成日時：2021年1月16日 10時
