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｢……どうして、｣
ぽろ、と声が零れた。
私にはずっとつけろと言っておきながら、自分は外しているなんて。もしかして、外ではいつも外しているの？私と一緒に居る時しかつけていないの？私は貰った日から一度も外していないのに。
ぶかぶかの指輪を右手で摘んで、すーっと指から抜いた。
取り残されたこの指輪をどうしてやろうかと考えたが、ひとまずパジャマの右ポケットの中に落とした。窓を開けてポイッとしてやってもいいけど、それじゃあこの指輪の相方が悲しむと思ってやめた。
別に怒ってない。ちょっと悲しかっただけ。私も外してやろーか、って思っただけ。全然怒ってなんかない。
膨らんだ頬を引っ込めて、ふとリビングの窓を見た。
こんなに雪が積もってるのに、彼は一人で買い物に行ったのか。そう思うと少しだけ気持ちが落ち着いた。……のは一瞬で、｢忘れ物だよ｣と言って、今から渡しに行こうかなと思った。彼がどのスーパーに行ったのか予想はできるが、入れ違いになって、大事になってしまうような気しかしないので流石にやめた。
代わりにと言ってはあれだが、彼に反抗する気持ちで、ベッドで大人しくするのもやめることにした。いい加減体を動かしたいと思っていたし、家の中で一人なんて退屈にも程がある。
近くに掛けられていた彼の上着を拝借して、パジャマの上から羽織った。自分のクローゼットから靴下だけ手に取って、久しぶりに履いた。玄関のシューズケースから履きやすい靴を選び、立ったまますぽりと足を入れる。
彼はご丁寧に鍵を掛けて買い物に行ったらしい。私には効かないもんね、なんていたずらな笑みを浮かべて、内側から鍵を開けてやった。
玄関の扉を開いた瞬間、目を細めた。
もう一ヶ月以上家に籠っていた私には、外の光が眩しくて仕方なかった。
ひやりと冷たい空気が肺に取り込まれ、少しだけ息が苦しくなる。久しぶりに真冬の寒さを感じた。どれほど家の中が暖かいのか、いや、暖かくしてくれているのか、身に染みて分かった。
どんなに冬が嫌いだとはいえ、雪が積もっているのは珍しく、多少の興味が湧いてしまう。ベッドの上で窓の外の雪景色を眺めていた時はそうでもなかったけれど、いざこうして勝手に外に出てみたら触ってみたくなるものだ。
そうだ、雪だるまでも作ってみようか。その雪だるまの中に指輪を隠してしまおうかな、なんて悪巧みをした。
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空羽(プロフ) - ねこ娘さん» 初めまして。私は今回が初めての企画でして不安だらけだったのですが、参加者の方々に助けられながらなんとか完成できたものなので、こうしてコメントで伝えて頂いて本当に嬉しいですし、企画して良かったと心から思いました…。読んで頂きありがとうございました！ (2021年9月3日 15時) (
レス) id: d2cb5de424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして。まず感謝をお伝えしたいです、素敵なお話をありがとうございました…泣 皆様の作り出すお話、メンバーと作者様の個性に溢れていて一筋縄ではいかない展開に終始胸を打たれて唸っていました。タイトル回収も鳥肌立ちました、ごちそうさまでした… (2021年8月31日 9時) (レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：3人の文字書き | 作成日時：2021年1月16日 10時
