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秒針の音すら鳴らないこの部屋は、いつもエアコンの控えめな音だけが私の耳に届く。
彼が傍に居ないと生きた心地がしない。
たとえ何をしていてもいいから、ずっと隣に居てほしい。そんなことを口にしてしまえば、本当にずっと、ずぅっと一緒に居てくれそうなので、それはそれで少し怖い。
忙しい中、極力一緒に居てくれている現状に不満があるわけではない。毎日同じ布団で寝ているし、一緒に入浴することだってある。夜ご飯は必ず一緒に食べてくれるし、むしろ幸せ者だと思う。
左薬指の指輪に手を伸ばした。
彼から貰ったこの婚約指輪は、唯一の宝物だ。次に夏が訪れたら入籍しようと思っている。彼は早く籍を入れたがっているけれど、結婚記念日は夏の日がいいと駄々をこねたら、しぶしぶ了承してくれた。｢その代わりに指輪はずっとつけておいてね｣なんて抜かりのない言葉もついでに貰った。
ごろんと寝返りを打って、目を閉じる。早く帰って来ないかなぁ、なんて、彼が家を出てまだ10分も経っていないのに。
最近、毎日のように走馬灯を見ているような気がする。彼と出会った夏の日だとか、告白してくれた花火大会の日だとか。思い返すのはいつも夏の思い出ばかりだ。それはきっと、彼が夏の青空と太陽の日差しが似合う人だから。私もそんな夏が、彼が大好き。
｢一年中ずっと夏だったらいいのに｣なんて彼に言えば、きっと｢冬があるからこそ、夏は輝かしいんだよ｣と言って笑うと思う。
夏は好きだけど、かといって365日熱中症に気を付けなければいけないのは苦痛だ。それに、過ごしやすい春や秋は嫌いじゃない。
でも、たとえ彼が何と言おうと、私は冬が嫌いだ。
気付けば私は、冬に抵抗する思いで布団から抜け出していた。近くに置かれてあったスリッパを履き、寝室を出る。
リビングの暖房が廊下に流れており、暖かい寝室を出ても、そこまで寒くは感じない。本当に寒いのはトイレとかお風呂とか。寒いから純粋に行きたくないと思ってしまう。
スリッパをパタパタと鳴らし、リビングのソファに飛び込んだ。寝具のマットレスとは違う心地良さに、少しだけ頬が緩む。
テレビを付けようとテーブルに手を伸ばした時だった。
ガラステーブルの上に、見覚えのある銀の指輪がぽつんと取り残されていたのを見つけた。
私はおそるおそる手に取って、サイズの合わない指輪を自分の指輪の上からつけてみた。
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空羽(プロフ) - ねこ娘さん» 初めまして。私は今回が初めての企画でして不安だらけだったのですが、参加者の方々に助けられながらなんとか完成できたものなので、こうしてコメントで伝えて頂いて本当に嬉しいですし、企画して良かったと心から思いました…。読んで頂きありがとうございました！ (2021年9月3日 15時) (
レス) id: d2cb5de424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして。まず感謝をお伝えしたいです、素敵なお話をありがとうございました…泣 皆様の作り出すお話、メンバーと作者様の個性に溢れていて一筋縄ではいかない展開に終始胸を打たれて唸っていました。タイトル回収も鳥肌立ちました、ごちそうさまでした… (2021年8月31日 9時) (レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：3人の文字書き | 作成日時：2021年1月16日 10時
