【шτ】君は全部、忘れてる【赤】 (ページ10)

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一限目を終えて、早めに二限目の教室に向かう。友人にも、大丈夫？顔色悪いよ？と心配されてしまった。

隅っこの方に座って、講義が始まるのを待つ。

そういえば、スマイルくんはどこだろうか、と顔を上げた時だった。

「ねぇ、隣、いい？」

驚いて声のした方を向く。

紛れもない、ぶるっくの声だった。けれど、その言葉を咀嚼するうちに、喜びはどんどん萎れていった。

いつもの彼なら、そんなこと、聞くはずもないのだから。

「…うん、いいよ」

「ありがと」

その柔らかな声も、笑顔も、何も変わらないのに。

「君の名前は？」

「私、は、朝井A」

声が震えている。そのことに気づいたのか、ぶるっくは心配そうな顔をした。

一体、誰のせいでこんなことになってると思ってるの。

「…えっと、朝井さん、どうしたの？」

「ぶるっく」

「あ、スマイルじゃん〜」

涙が零れそうになったところに、ちょうど良くスマイルくんがやってきた。ぶるっくの隣に座ったスマイルくんは、私の表情を見て察したらしい。

講義中、ぶるっくは何度か話しかけてくれたけど、ほとんど上の空で、大した返事はできなかった。そのうち、スマイルくんに集中しろよと言われ、ぶるっくは口を尖らせながら前を向いた。

スマイルくんに後でお礼しなきゃな、なんて考えながら、私も前を向いた。聞いているかと言われたら、頷けはしないのだけど。