【шτ】君は全部、忘れてる【赤】 (ページ8)

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「ごめん、ごめんね」

ぶるっくは、私を抱きしめて泣いていた。

泣きたいのはこっちの方だよ、なんて思う。

なかむくんは昨日と同じように、ぶるっくに昨夜のことを聞いていった。また夢の話になり、途中でその夢を思い出せなくなって、そして私を思い出した。

まるで、いや、昨日とほとんど同じだ。

違ったことといえば、夢の内容。

昨日は私と出会う、そんなところで思い出せなくなっていたけれど、今日は違った。

その日から更に進んで、高校三年生の夏。私とぶるっくが、付き合い始めたとき。

ぶるっくが告白した、その話で終わった。

そして私を思い出し、今に至る。

なかむくんは妙に明るい空をじっと睨んでいる。

「…とにかく、午後の講義があるから。戻ろう」

昨日とまた同じことが起こったという不安と、思い出すことができたという安心で入り乱れた空気の中、きりやんは苦い顔をしながらそう言った。

みんなも頷いて、それぞれの教室へ去っていく。

「朝井さんもここ？」

友人と話していると、後ろから声が掛かって驚いた。なかむくんだ。

「うん、そうだよ。…どうしたの？」

昨日と同じような、暗い顔だ。

―――なかむくんは、何を知ってるの？

昨日も今日も、ぶるっくに夢の話を持ちかけたのはなかむくんだった。

何か知っている、と考えてもおかしくはないだろう。

口を開きかけたとき、チャイムが鳴る。なんでこうもタイミングが悪いのか。なかむくんはハッとして、ごめん、と言って、近くの席に着いた。

…どうして、謝るの？

そんな気持ちは、講義が進むと一緒に薄れていった。