【шτ】君は全部、忘れてる【赤】 (ページ5)

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「変な夢見た」

「夢？」

「うん。なんか、すごいぼんやりした夢なの。多分、昔だと思う。君らと会ったときだから、高二かな？で、誰かに会うの。知らない人。それで、」

ぶるっくはそこまで言って、顔を顰める。

「痛った…」

「ぶるっく？」

「…思い出せない。そこまで」

「その誰か、って、誰？」

うーん、とぶるっくは唸って背もたれに思い切り身を預け、空を仰ぐ。

姿勢を元に戻したとき、私は、彼の夜みたいな深い青い瞳と目が合った。

「……A？」

「え、」

「あれ？Aってさっきまでここにいたっけ？どうしたの？てか何話してたんだっけ〜」

そんなことを言いながら、あはは〜、といつものように笑うぶるっく。

驚きで、開いた口が塞がらない。

さっきまでのは、一体。

「…み、みんな？」

でも私は、驚きよりも、胸に込み上げてくるものがあって。

「ぶるっく、」

「え、え、なに！？なんで泣いてるの！？」

「はぁ〜……なんだったんだよ…」

「意味がわからん。なかむ、分かってやったの？」

「…いや。聞いてみただけだよ」

他の三人がいるのも忘れて、ぶるっくに抱きつく。なになに〜！？と言いながら、ぶるっくは受け止めてくれた。

「なんか、腹減ったわ。おいぶるっく、昼なんか奢れよ」

「はー！？やだ！なんでよ！」

「いや、これには俺も賛成」

「きんさぁん！？」

止まらない涙を拭いながら、いつも通りのやり取りに笑ってしまう。

きっと今、私は酷い顔をしている。

チャイムが響く。四コマ目を取っていなくて良かった、と心底思った。

四コマ目を取っているというぶるっく、きりやん、きんときくんはその場を離れていく。

私も友達の元へ向かおうと思って歩きだそうとすると、後ろから声がかかる。

「朝井さん」

「なかむくん？」

彼の表情は、事が終わったにも関わらず、どこか暗い気がした。

「…いや。なんでもない。またね」

けれど、すぐにいつもの笑顔に戻り、図書館の方に去っていく。

「…？」

よくわからないけれど、もう気に病むことなんてないのだ。そう思うと心が随分軽くなった。

私の名前を呼ぶ友達の声が聞こえて、そちらの方に意識を飛ばした。