【шτ】君は全部、忘れてる【赤】 (ページ16)

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なんで忘れてたんだろうね〜、と笑うぶるっくに、心の底からホッとする。

そうしたら、また涙が頬を伝った。

「な、なんで泣いて、って、あ……」

私の涙を掬って、ぶるっくは固まる。そして、ストンともう一度椅子に座り込んだ。

「僕、また、忘れてたんだね。…ごめん、ね」

「ううん、良い、の。大丈夫だから」

そんなの、全部嘘だ。それでも、そう言うしかなかった。

ぶるっくも、泣きそうな顔だったから。

「…なかむ」

ずっと黙っていたスマイルくんが口を開いた。

「なぁに、スマイル」

そう返事したなかむくんの声音は、至っていつも通りだった。けれど、その瞳と表情には影が落ちている。

ぶるっくが私を忘れるようになってから、時折見せるようになったものだった。

「なかむくんは、何を知ってるの？」

スマイルくんが口を開く前に、私はそう尋ねていた。

スマイルくんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに無表情に戻り、同じことを聞きたかった、という風に、コクリと頷く。

なかむくんは、一つため息をついて、口を開いた。

「俺もね、こうかな、って思うことをやってるだけだよ。その根拠は、あることにはあるけど。…それは、話せない」

「…そうか」

なら良い、という風にスマイルくんは立ち上がる。ちょうど良くチャイムが鳴り、俺も講義出てくるね、となかむくんも去っていった。

「ねぇ、A。今日、デートしよって言ってたよね」

「うん」

「今から、行こうよ。まだたくさん、時間はあるから」

彼の右手がこちらに伸ばされる。夢で見た光景がフラッシュバックした。

「…うん、行こう」

絶対に離さないようにしよう。

ぎゅっとその手を掴んだ。