【шτ】君は全部、忘れてる【赤】 (ページ13)

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私たちが驚いてなかむくんに視線を向けたのをよそに、彼はぶるっくにそうでしょ？と笑いかける。

「う、うん。無い、よ」

「…そう」

ぶるっくの戸惑った声の後、きりやんがそう言ってため息をつく。

周囲の喧騒の中で、私たちのテーブルだけが静かだった。

「…ねぇ、A。明日、全休でしょ」

そろそろ戻らなければ、という時間になって、ぶるっくは口を開いた。
それに頷くと、ふにゃりと笑う。いつもの笑顔だった。

「二人で出かけようよ。気晴らし、って、僕が言うのもあれだけど…」

何も言えずに黙っていると、きりやんが口を開く。

「…でも、忘れてたらどうすんだよ」

「…」

今度は、ぶるっくも何も言い返さなかった。

ここまで来てしまえば、その可能性の方が高い。

きりやんはもう一度大きくため息をつき、明日の自分にメッセージを残してから寝ろ、と言う。ぶるっくもわかった、と大人しく頷いた。

「簡単なので良いと思うよ。そうだね、大学に来い、とかで良いんじゃないかな。俺らは大学にいるし、そしたら思い出せるでしょ」

なかむくんがそう口を挟む。まるで、そうだと確信しているような口ぶりだ。

「朝井さんも、ぶるっくが来なかったら大学に来てね。昼でいいし」

「…う、ん。わかった」

突然話しかけられ、たじろぎつつ頷く。本当に、なかむくんは何を知っているんだろうか。

「さ、昼の授業もがんばろー！」

そう言って腕を振り上げたなかむくんは、いつも通りの明るい顔をしている。

ぶるっくは、ははっと笑って、一緒に腕を上げながら、おー、と言った。

今日のぶるっくの夢は、この大学の合格発表までだった。