【шτ】君は全部、忘れてる【赤】 (ページ11)

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「なぁ、ぶるっく、昨日なんか夢見たか？」

講義が終わった後、スマイルくんがそう言った。しかし、ぶるっくは首を傾げる。

「えぇ？見てないよ〜、多分」

「多分ってなんだよ」

「だって、覚えてないんだもん…夢って起きた時に忘れるものじゃん。そう言うスマイルは覚えてるの？」

「いや」

「ほら！」

じゃあ、これまでの夢は何故覚えてたんだろう。聞き方の問題なのだろうか。
それとも、もう夢を思い出すことはできないのだろうか。

そうだとしたら、私を思い出す方法は？

「ね〜、朝井さん、今日一緒にお昼食べようよ」

「…うん。いいよ」

苗字で呼ばれるのは慣れない。慣れたくはない。

「あいつらも誘おう。いつものカフェで。じゃあまた」

スマイルくんは何か思うところがあるのか、そう言ってぶるっくを連れて去っていく。

ぶるっくは、スマイルくんに知り合いだったのとかなんとか尋ねていた。あの二人は次も同じ講義を取っているのだろうか。

「A、何してんの…って、わぁ！？」

そのままそこに突っ立っていると、友人に声を掛けられる。

「なんで泣いてるの！？」

「え、」

「えって何！？気づいてなかったの…」

ごしごしと頬を拭って、笑ってみせる。

「大丈夫だよ」

「…そっか」

友人は納得していないような顔をした。もう一度大丈夫だよ、と言って、次の教室に歩き出すと、待ってよ！と言いながら後ろを着いてきた。

友人には心配されたくないから、このことは話していない。

気をつけなきゃ、と思いながら、歩を進めた。