奇跡の神様/kr ページ31
あぁ、退屈だ。
道端にぽつんとある鳥居と、小さな本殿にわざわざお参りをする人はいない。時たま、近くに住むおじいさんやおばあさんが散歩がてらに訪れる。それくらいだ。
逆に、正月はこの辺一帯の地域の人が多く訪れて、それなりに忙しい。中間は無いのか、なんて思うけど、神社なんてそんなもんか、という結論に至る。
使い魔である狐の頭を撫でながら、境内に数本ある桜の蕾がだんだんと膨らんでいるのに気づいて、春か、と思った。ここでもいいが、折角なら、あいつらも誘って花見でも行くか。近くの河川敷なら行けないこともない。
「！」
誰かが境内に足を踏み入れたのがわかった。暇なので、少しくらい良いだろう、と思い、外に出て陰から覗いてみる。
俺は、思わず目を見張った。
俺が言うことではないが、『人』じゃない―――そう思えるほど、美しい人だった。
そう、彼女は正真正銘、人だったのだ。
彼女がそうであることを、悔やむほどに。
俺が俺であることを、恨むほどに。
ぼーっとそのまま眺めていると、袴の裾を引っ張られる感覚がして、ハッとする。見られるのはあまり良くない。狐にありがとう、と言いながら、もう一度本殿の中に入った。
彼女は、小さな手水舎できちんと手水をしているようだった。彼女が賽銭箱に五円玉を投げ込んだのを見届けて、静かに目を閉じる。
貴女の、願いは。
『明日、あの人に告白する勇気をください』
神はなんと残酷なのだろうか。いや、俺も神なんだけど。
彼女の後ろ姿をぼーっと見送りながら、生ぬるい風に吹かれる。
きっと、俺だったら彼女に勇気をあげないことだってできるし、告白するタイミングを作らないことだってできるし、俺が彼女の前に人間として現れて付き合うことだってできる。
けど。
小さく首を横に振る。こちらを心配そうに見上げる狐に微笑みかける。
「…良いの、きりやん？」
いつの間にか隣にいたぶるっくが、こちらを覗き込んでくる。
「良いんだよ、これで」
君に、幸あれ。
彼女が一人の男を連れてまたこの神社に訪れたのは、二日後の桜の花が開いた日のことだった。
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空羽(プロフ) - 霧華さん» 実はこの間、雷が鳴った時にこのお話を思いついたんです笑ほっこりして頂けて良かったです！ただでさえこんなご時世なのに、天気が悪いと更に気が滅入ってしまいますよね…こちらこそいつも読んで下さりありがとうございます！マイペース更新ですが気長にお待ち下さい。 (2020年4月20日 13時) (
レス) id: 295f716bc6 (このIDを非表示/違反報告)
霧華 - 最近天気荒れてること多くて怖かったので雷のお話見てほっこりしました…！素敵なお話いつもありがとうございます！！無理せず更新頑張ってください(*´ `) (2020年4月20日 10時) (レス) id: daf330d400 (このIDを非表示/違反報告)
空羽(プロフ) - みあさん» みあさんありがとうございます！マイペースに更新していきますので、気長に待っていて下さると嬉しいです。よろしくお願いします！ (2020年3月12日 19時) (レス) id: 295f716bc6 (このIDを非表示/違反報告)
みあ - 続編おめでとうございます！これからも更新楽しみにしています(*^-^*) (2020年3月12日 14時) (レス) id: 6bfd7b5c61 (このIDを非表示/違反報告)
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