【шτ】幸せの欠片【短編集】 (ページ8)

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止まない雨/kntk ページ8

「「あ、」」

靴箱を挟んで隣にいる人と声が重なった。

「雨、すね」

あちゃー、というような顔をする。彼のネクタイは私と同じ色だった。

彼は雨が止むまで待つ気なのか、靴箱の前に座る。

私も私で、今日は生憎傘を持ってきていなかったので、靴箱の前に座った。
本でも読もうか、とカバンを開けると、端に折りたたみ傘が見えた。

なんだ、持ってたのか。彼には申し訳ない気もするけど、先に帰ろうかな。

それを取り出そうと手を伸ばしかけた、そのとき。

「せっかくだし、お話しない？」

いつの間にか隣に座っていた彼は、優しそうな笑みを浮かべた。

なんとなく断れなくて、彼に向き直る。

「…名前は？」

「俺？きんときだよ」

「きんとき、さん」

「はは、同い年なのに。さん付けじゃなくていいよ」

「じゃあ、きんとき……くん」

「合格かなぁ。君は？」

折りたたみ傘なんて、なかったことにしよう。

「当ててみてよ」

「えぇ…君は聞いたのに」

きんときくんは、少し不満げな顔をする。

そんなのが嘘のように、じゃあさ、と、にやっとして言った。

―――俺の好きな人、って言ったらどうする？