【шτ】幸せの欠片【短編集】 (ページ39)

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ずるい/kntk ページ39

「あ、」

「Aどうしたの？」

友達とのカラオケの帰り。

スマホからピコンと音がしたので見てみると、彼からのメッセージだった。

『あそこのカラオケだよね？暗いし迎えに行こうか？』

「〜〜…っ」

「青春してるねぇ」

友達のその声に、返す言葉もない。

『お願いします』

それだけ送って、彼を待った。

_________

「あ、いた。…待ったよね？寒かったよね、ごめん」

ブレーキ音が響き、彼が自転車を止めてこちらに来る。

「ううん、来てくれてありがとう」

私がそう言うと、彼は別にいいのに、と言って笑う。

すると、一際強い風が突然吹いて、私の下ろしていた髪はぐちゃぐちゃになってしまった。

「みっ、見ないでっ」

私がそう言って彼に背を向けようとしたら、彼の大きな手がするりと伸びてきて、私の髪をするすると直していく。

「…ん、可愛くなった。帰ろっか」

きんときくんは、そう言って笑った。

「…そういうの、ずるい」

なんだか悔しくなって、彼が跨った自転車の後ろに乗り、彼の体にだきついてやる。

「バッ、カ…」

彼はわかりやすく驚いて、顔を赤くした。

「…ずるいのは、どっちだよ」

「きんときくんでしょ」

「Aの方に決まってるでしょ」

「きんときくん！」

「A！」

下らない言い合いを繰り返し、お互いを褒め合い始めて、最終的にどちらも赤面したのは二人だけの秘密。