【шτ】幸せの欠片【短編集】 (ページ2)

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「うん。…何かあった？」

「…ちょっと、ミス、しちゃって」

「うん」

「めちゃくちゃ怒られて」

「うんうん」

「仕事増やされた…だけ」

「なるほど」

そこまで言うと、私は彼が作ってくれたチーズリゾットをまた口に運ぶ。優しい味だった。

彼は何かうんうんと考えていたけど、思うところがあったのか、私の頭に手を置いて、微笑んで言った。

「A、よく頑張ったね、えらいね」

ぽんぽん、と、彼は子どもをあやすようにする。

彼の手のひらから、あったかさが伝わってくる。

そのあったかさに安心して、気づいたら涙が頬を伝っていた。

「わぁ！？泣かないでよ〜…」

「ごめ、ん」

「…ほんとに、Aは偉い。仕事に行くし、怒られても、仕事増やされてもちゃんと全部やってくるし、こうやって帰ってきてくれるし」

それに、と付け足して、なかむは満面の笑みで言った。

「呼吸出来て、生きてて、えらい！」

「へっ」

予想もしなかった言葉に素っ頓狂な声が出る。

「も、もう、馬鹿にしないでよ…！」

「馬鹿になんてしてないよ！本気！」

彼はそう言って頬を膨らます。

「…A、生きててえらい」

改めて彼の口から零れ落ちた言葉は、同じ言葉のはずなのに、ストンと胸に落ちて。

「…なかむも、生きてて、えらい」

平日の深夜、お互い顔を見合わせ笑った。