【шτ】幸せの欠片【短編集】 (ページ1)

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生きててえらい！/nkm ページ1

「なんでこんなこともできないんだ！」

「済みませんでした、」

ガミガミと起こり続ける上司と対照的に、私は頭を下げ続ける。

こうなって10分は経っている気がする。

こんな時間があれば、今すぐにミスを修正したい。
そもそも、ミスしたのは私のせいなんだけど。

「だからお前はここ止まりなんだ！」

同僚や後輩、先輩達からの目が痛い。

哀れみや同情のものがほとんどなので、別に嫌な気持ちがするという訳では無いが、気になるものである。

「ほら、さっさと直してきて。もう二度とこんなミスはしないように」

「…はい」

デスクに戻って、ミスした書類と、それのせいで追加された大量の仕事をドサッと置いた。

誰にも聞こえないくらい、小さなため息をつく。

気づけば定時を回っていた。ちらほらと帰る人達が見える。

ちらりと隣に置かれた仕事の山を見た。私にそれは叶わない。

黙々とキーボードを打ち続ける。全てが終わったときには、日付を跨ごうとしていた。

酷い眠気のする体に鞭を打って、のろのろと駅に向かい、私と同じような境遇であろう人達をぼーっと眺めながら、彼の待つアパートの階段を上る。

もう寝てしまっているかもしれない、とゆっくりと静かに扉を開くと、

「A、おかえり！」

いつもの明るい笑顔を浮かべ、私を迎える彼＿＿なかむの姿があった。

「…ただいま」

「めちゃくちゃ眠そうだね、お疲れ様。お風呂湧いてるし、とりあえず入っちゃったら？軽い食べ物作っとくね」

「…うん。ありがとう」

私の鞄を受け取って、奥にパタパタと走っていく。

…どちらが嫁なんだか。

いつか、お前はいい嫁になる、と誰かに言われていた気がする。本人は激怒していたが。

「はぁー…」

ゆっくりと風呂につかると、疲れがどんどんお湯に溶けだしていくような気分になる。

「部屋着置いとくねー」

それだけ言って脱衣所から彼は去っていく。お礼は言いそびれた。

彼にはされてばっかりだ。

風呂から上がる。廊下にまでいい匂いが流れてきていた。

「いただきます」

「おいしい？」

「…おいしい」

良かった、と彼は微笑む。

それにつられ、つい笑ってしまうと、彼はほっとした表情に変わった。

「良かった、やっと笑ったね」

「…私、笑ってなかった？」

彼の言葉に驚いて問うと、彼は困った笑みを浮かべて言った。