恋 い 慕 う 、 陶 酔

20 ページ21

Takahiro.







・


隆「どうして、悲しそうな顔で、言うんですか…




もっとうまく嘘ついてよ、



余計戻れないだろ…」








どうして、期待させるんだよ




どうせ、兄さんのとこに帰っていくんだろう？







やめて、俺はこんなにも好きなんだよ



そんなことされたら、我慢できないよ






…でも、これ以上困らせたく無いから




隆「でも…





ごめんなさい、



そんな顔させたかったわけじゃ無いんです


だから、今日はもう家に入ってください」





自分から、その手を離した




もう、この熱は無かったことにしなきゃいけないから






まぁ、できるわけないんだけどね




「今日はありがとう



…また飲みに行こうね



好きって言ってくれて、嬉しかった



ありがとう」






その言葉だけで、俺は何日生きていられるんだろう


愛しきれない貴女の事、

まだ想ってる



まだ、望んでる





その言葉を聞いて、引き下がるなんて優しいこと、俺には出来ないから


嬉しい、って言った貴女を放っておく勇気も、覚悟も無いから









隆「…忘れようとしないでください



俺は、割と本気なの





貴女にまた会いに来ます」





しつこく、諦め悪く





拒まれても、いいよ


それで諦められるんだったら




でも、貴女も一度、俺だけを見てくれたでしょう？




その事実に、頬が緩んだのと同時に



貴女は言いました






「私も、隆弘くんの好意拒めないんだ




…ごめんね、こんなので



楽しかったよ、またね」







ﾊﾞﾀﾝ




そう言って貴女が見せた、はじめての儚い表情




貴女は素直な人だから




拒めない、ってこと言わなければ分からないのに


言わない、っていう選択がない貴女だから




嫌い、って思ったらきっと分かり易い人



だからこそ、あの反応が嬉しくてしょうがない





家の前で、空を見上げる





狂おしいほどに月が綺麗で





ちょっと自分が小さく見えた





もうこれ以上の明日が、2人に無いことも




小さく見えたよ






嗚呼、無情に夜は更けていく







隆「…予想以上、だわ」









・





また、歯車は動き出す




これだけで、終わるなんて事はないから








直「隆弘？」

21→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す