4月5日 夢路 ページ2
「…嘘、」
夢か、ちょっと遅れたエイプリルフールか、悪戯か。
そう考えようとしたけど、指は勝手にそのDMを開いていた。
SEVENTEEN officialこんにちは。SEVENTEEN公式アカウントです。 突然で申し訳ありません。 あなたをSEVENTEENの14人目のステージメンバー兼マネージャーとして声を掛けさせて頂きました。 了承してくだされば幸いです。
普段の日本公式アカウントからの投稿みたいにカタコトではなく、流暢な日本語だった。
恐らく誰か日本人に文章を点検してもらったのだろう。
考えろ、私。よく考えろ、
思ってもなかった申し出だけど、
メンバーになるということはとんでもないリスクが潜んでいると思う。
ヨジャが入ったらファンのみんなが騒がないだろうか？
それにステージメンバーって何だろう？
不安要素は沢山あるのに。
考えなきゃいけないことは沢山あるのに。
私の指は、さっきから、どうかしている。
まるでそれが意志を持ったかのように、気がついたら返信をしていた。
A分かりました、よろしくお願いします。
SEVENTEEN officialありがとうございます! 差し障りがなければ明後日の朝8時にPredisの事務所に来てください。 詳しいことはそこでお教えします。
うわあ……現実味を帯びてきた。
当然、Pledisに行ったら日本にはしばらく帰ってこないだろう。
高校生になって、学校が家から遠いからって契約した一人暮らしのこの部屋とか、窓から見える景色とか、
そういうものが全部、途端に懐かしいものに思えてきた。
「…お父さんに言わなきゃ」
お父さんは海外でカメラマンをしていて、天真爛漫な人だ。
多分、私の韓国行きを許してくれる。
お母さんは ━━━━
お母さんは。
きっと、
「Aの好きなようになさい。」
って言うんだろう。
私が幼い時に天国へ行ってしまったお母さん。
ちゃんと練習した歌を初めて聴かせた時に、涙を流してくれたお母さん。
「私、憧れの、夢にも思わなかったこと、できるかもしれないよ」
まるで私の呼びかけに応えるように、窓の外から木々の葉が風に揺れる音がした。
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作者名：瞳 | 作成日時：2019年4月1日 20時
