Two flowers

4 ページ42

「…え

うそ、え？や、ちょっと」

「ふっ」


1人で慌てる私の隣でウォヌが笑う


「ねぇ、ウォヌ…今のって、つまり」

「あいつの計画はまた新しく始まったってことだな」


最後に主人公が悪役をやっつけて、幽霊船も沈めることが出来て、無事ハッピーエンドかと思ったのに


バラバラになって死んだはずの悪役が

元気な姿で別の船に乗り込むシーンが


「終わり…？」

「ん、終わった」

「だめ、なんで、やだ」


ハッピーエンドにして！お願い！


あの人が生きてたらまた別の船で同じように怖いことが起きて、同じように幽霊船になるってことでしょ？

そんなのだめ

怖すぎる

やだ

もう海行けない
船見れない



「はぁー面白かった！

Aどうだった？そんなに怖く…


あれ？」

「……」

「今絶望してるとこ」


頭を抱えた私はウォヌの胸に倒れ込んだ

その背中を優しくぽんぽんと叩いて、ジスの問い掛けにも代わりに答えてくれる


「絶望？なんで」

「ハッピーエンドじゃないから」

「ハッピーじゃん！船出られたよ？生きてるし」

「……みんな死んじゃったもん。
それに、あの悪い人だけが生きてて…また悪いことしようとしてて…」

「あ〜」

「A、すっかり映画の世界に入り込んでるね」

「やっぱり怖かったですよね、ヌナ」

「大丈夫？今夜眠れそう？」

「……」


無理

今、ウォヌから離れることも難しい


「じゃあ今日は俺と寝るか」

「うん」

「"うん"？」

「ちょっと！！あんた何ちゃっかりベッドに誘ってんのよ！！変態！」

「俺は冗談で言ったんだけど」

「A
ほら、部屋帰るよ。私が一緒にいるから大丈夫でしょ」

「…大丈夫じゃない」

「え」


私の腕に触れるジスの手を静かに剥がす


私、怒ってるんだからね

許さないから



「A？」

「ジスの嘘つき」

「……」

「ラブロマンスって言ってホラー観せるなんてひどい」

「そ、それは、
みんなで楽しく観たら、もしかしたらAもホラー好きになるかもって」

「楽しくない！」


「わぁ…A怒ってる」

「珍しい」

「気が立ってるんだろうね」

「そりゃそうですよ。嘘ついて連れて来られて、苦手なホラー観せられて…」


恐怖のせいで感情が乱れてる

それは自分でもわかる


ジスはきっと純粋に私とホラーを楽しみたかっただけ。悪意がないのはわかってるけど、それでも許せない



怖いものはどうしたって怖いのだ

5→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す