９４：背伸びしているわけじゃない ページ44
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それがわかるのに…どうしてウォヌ先輩は、私の気持ちに気付いてくれないの？私を、視界に入れてくれないの…？
下手をすれば、全ての疑問と想いを先輩にぶつけてしまいそうで。……私はそれを制止する為に、逃げるように彼から目を逸らして俯いた。
私が次の言葉を探している間にも、私達の足は歩み続けていて。先輩と私のスニーカーの音が、痛いぐらいに耳に響く。それぐらい、マンションまでの帰路は静かだった。
「 ……昔読んだ小説に、書いてあったんです 」
どれぐらい押し黙ったかわからないし、先輩のことを待たせたかも、定かではない。…漸く絞り出した私の声に、彼が耳を傾けているのをしっかりと感じた。
「 大人は、次の朝に笑ってあいさつしあえなくなるような言葉を、平気で口に出してはいけないって 」
朧げな記憶を、頭の片隅から呼び起こさせる。告白した主人公が、想いを伝えたことを後悔している時に言っていた気がする。…このセリフが印象深くて、数年経った今でも、記憶のどこかにこびり付いていたんだ。
「 ……私にとってそれは、相手に好きを伝えることなんです 。……伝えちゃったらきっと、私はその人の隣にいられないし、それこそ……挨拶だって、話だって、出来なくなります 」
W『 ……A 』
「 …だから私は、今のままで良いんです 」
先輩に言っているようで、どこか、自分にも言い聞かせるように、私はその言葉を口にした。…これ以上、自分の幸せを求めない為に。彼への想いを、増幅させない為に。
それに私は、あと1年ほどすれば20代に入る。傍から見れば立派な大人である。…そんな 大人 が、子どものように、自分の気持ちだけで突っ走って良いわけがない。
W『 ……誰か他に…好きな人がいるの、相手には 』
しばらく黙り込んだ後、先輩は小さな声でそう聞いてきた。それに はい と答える。
W『 …辛いよな、好きな人がいることを、好きになるって 』
夜空に向かって息を吐き出す先輩の、キレイな横顔を見つめる。
辛いですね、確かに。私達の気持ちが1番よくわかるのは、私達…お互いだけで。…それがとても、皮肉だと思った。
そうこうしている内に、マンションの前に着いてしまった。
「 ……ありがとうございました。会いに来てくれた上に、送ってくれて 」
レジ袋を受け取った私は、マンションの前で向かい合い、雰囲気を変えようと意識して明るい声を出す。うん と頷いてくれた先輩も、小さく笑っていた。
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アオコ(プロフ) - ハローさん» お返事遅くなってしまいほんとうに申し訳ないです…！コメントありがとうございます！これからもよろしくお願い致します…！！！！ (2020年11月21日 1時) (
レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
ハロー - 続き楽しみにしてます (2020年11月14日 22時) (レス) id: 5db7b589d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオコ | 作成日時：2020年10月18日 18時
