９１：わかってはいたけど、強くそう思った ページ41
.
W『 ……でも、それだけ話したかったんだよ、Aと 』
先ほどまで、困ったように眉を下げていたというのに。不意にこちらを見たウォヌ先輩は、優しく微笑んでいた。大好きなその微笑みと彼の言葉に、心臓が音を立てて跳ねる。
W『 …仲違いしたままは嫌だったし、それに、謝りたかったから 』
お昼の私は、なんてことをしてしまったんだろうと思った。先輩はこんなにも私のことを考えてくれていたというのに……逃げた私は、彼のその気持ちを踏み躙ったも同然だ。
ごめんなさい という言葉は、口を衝いて出ていた。先輩の足がピタリと止まり、それにつられて私も立ち止まる。
ゆっくり顔を上げると、複雑そうな表情を浮かべて私を見下げる先輩と目が合った。
W『 ……なんでAが謝るの？』
「 ………私、実は……ウォヌ先輩がお昼にもマンションに来てたこと、知ってたんです… 」
素直に白状すると、さすがに先輩は驚いたらしく眉をピクリと跳ねさせた。
「 ……でも……先輩に会って、何を話せば良いのかわからなくて… 」
W『 …うん 』
「 ……話がしたいって思ってたのは私だけじゃなかったんだっていうのが嬉しかったんですけど……でもそれ以上に、先輩から逃げちゃったことが、ほんとうに申し訳なくて…… 」
W『 うん 』
「 ………だから……ほんとに、ごめんなさい…！」
有り難かった。口を挟まず、私の話を最後まで聞いてくれた先輩のことが。
勢いを付けて頭を下げると、先輩に A と名前を呼ばれる。……そんな優しい声で呼ばれたら 許してもらえるのかな と勘違いしてしまうから…やめてほしい。
先輩の声に導かれるように、下げていた頭を上げる。……目が合った彼は、やはり、微笑んでいて。そのことが存外で なんで… という掠れた声が、気付けば出ていた。
W『 …俺達はお互い、さっき謝ったでしょ。だからAが今謝る必要なんて、ないんだよ 』
「 ………でも… 」
W『 良いから。……これ以上、自分のこと責めないで 』
わかった？と、念を押すように顔を覗き込まれる。……なぜか、泣きたくなった。
やっぱり 素敵 とは程遠い私のことを責めない先輩の優しさに、胸がいっぱいになったんだ。
震えた声で はい… と頷けば、先輩は 良い子 と口角を上げ、その大きな手で私の頭をポンと撫でた。
そして 行くよ と、再び歩き始める。その背中を見つめて、胸が締め付けられた。
.
９２：私の想い、苦しみも全て→←９０：意味がわかってしまえば、それは…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 417人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオコ(プロフ) - ハローさん» お返事遅くなってしまいほんとうに申し訳ないです…！コメントありがとうございます！これからもよろしくお願い致します…！！！！ (2020年11月21日 1時) (
レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
ハロー - 続き楽しみにしてます (2020年11月14日 22時) (レス) id: 5db7b589d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオコ | 作成日時：2020年10月18日 18時
