７０：私の言葉も考えも全て ページ20
.
私の発言に、ウォヌ先輩が息を呑んだのが気配でわかった。少し見開かれた、相変わらずキレイな目。…見つめれば見つめるほど、図星だということが伝わってきて。……居た堪れなくなった私は、逃げるように目を逸らした。
「 ……私、気付いちゃったんです……。先輩が誰をずっと想い続けてるか… 」
W『 ………全部、知ってるんだ 』
「 ……勝手に聞いちゃって、ごめんなさい… 」
謝って、頭を下げる。頭の位置を元に戻しても、視線を上げることは出来なかった。今の私は先輩の表情も見られないだろうし、目を合わすことも無理だと思う。……そんなことをしてしまえば……きっと、泣いてしまう。
「 ………………私にだって、金木犀の香りは教えられます 」
小さな小さな声だったけれど、先輩にはきちんと伝わったらしい。ゆっくりと視線だけを上げると、ひどく驚いたように目を見張った彼と目が合った。
想うだけで良いと、伝わらなくて良いと、そう決めたのは私自身なのに。先輩が誰かのことを思い出すだけで、胸が苦しくなる。目の前の私を見ていてほしいと、望んでしまう。
……人を好きになるということは、同時に人を我が儘にしてしまうらしい。
私の考えを キレイゴト だと言い放ったミンギュくんの言葉が、今になって、痛いぐらいに胸に突き刺さった。……全て、彼が正しかったんだ。
「 …………ごめんなさい…ほんとに… 」
震える声で放った謝罪は、何に対するものなのか、自分でもわからなかった。
W『 ……A 』
先輩が私の名前を呼んでくれることが、すごく愛おしかったのに。今は、聞きたくもなかった。別の人を想いながら呼ばれたって、何も嬉しくない。辛いだけだ。
W 『 ……おい、A 』
上着とバッグ、そして伝票を手にした私は、先輩の引き止める声を無視して席を立った。
レジにいた店員さんに伝票と数枚のお札を押し付け お釣りは大丈夫です と言って、早足でお店を出た。……先輩に追い掛けられたくなかったし、追い付かれるなんて、もっと嫌だった。
今、先輩と面と向かい合ってしまえば……私は必ず泣いてしまうし、自分の気持ちを止められなくなってしまう。……彼を、困らせてしまう。それだけは……ダメだ。
しばらく歩いていると、公園が目に入った。
そこへふらっと足を踏み入れ、ベンチに腰を下ろす。ダイレクトに冷たさが伝わってきて、思わず身体が震えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 417人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオコ(プロフ) - ハローさん» お返事遅くなってしまいほんとうに申し訳ないです…！コメントありがとうございます！これからもよろしくお願い致します…！！！！ (2020年11月21日 1時) (
レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
ハロー - 続き楽しみにしてます (2020年11月14日 22時) (レス) id: 5db7b589d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオコ | 作成日時：2020年10月18日 18時
