彼の想い ページ13
足を止めたのは、皆ランチに向かい人の少なくなった会議室の並ぶ廊下の角。
わざわざここまで来て何を言われるのだろうか。
謝罪でもしてくれたり…
「さっきミスが多いって怒られてたね。」
「そ、うだけど…何、そんな事言う為にここまで連れてきたの?」
思わず語気が強まってしまう。
それでもハニは涼しい顔で言葉を続けた。
「そうじゃなくて、何か悩みでもあるんじゃないのかなって。」
「悩みって…。」
今回ばかりはよく気付いてくれたなんて言わない。
彼だって何が原因か分かっているはずだし、分かってる上でこうして聞いているのだと思う。
それでも面と向かってアナタのせいだと言う気にはなれなかった。
嘘をつかれ、こんなに落ち込み、上司に怒られる原因であったとしても。
なんだか可哀想だ、なんて思えてしまって、怒る事も出来ない。
「…俺に言いたい事あるんじゃない?」
「ないよ。」
「嘘、ある。」
「ないってば。」
「ハッキリ言えばいいじゃん。」
「でもアンタは悪いと思ってないでしょ?」
「そうだね。」
「私がどれだけ責めても謝ってくれないでしょ?」
「多分。」
誘導されたように掛けられる言葉一言一言で私の本音が口から出ていく。
それでもハッキリとハニのせいだとは口に出来なかった。
もう言葉にする気も失い、段々と勢いを失って俯いてしまう。
「もう忘れろよ。」
苦し気に吐き出し、ぶつけられた言葉に顔をあげると同時に彼の胸へと引き寄せられる。
「好きなんだよ。ヌナの事が。」
ハニの体温を感じる腕の中で降り注がれる言葉。
吐息を感じる距離で聞こえたのは、辛そうな声だった。
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のびた(プロフ) - セブチラブさん» 初めまして!コメントありがとうございます。これからも応援して頂けるような素敵な作品を作れるよう頑張りますので宜しくお願い致します! (2020年4月30日 17時) (レス) id: 184d072e0e (このIDを非表示/違反報告)
セブチラブ - 面白いです!頑張って下さい!私片想い集まれさんの作品を今気に入ってるんですけどこの作品も気に入りました!これからも応援してます! (2020年4月29日 8時) (レス) id: 8caba2652c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のびた | 作成日時:2020年4月28日 3時