ウジと録音 ページ34
ウジ視点
歌詞の書かれた紙に目を落としていたAが顔を上げる。
録音ブースで歌うソクミナを見て「喉、狭くなってきたね」と小さい声で言った。
その声に「そうだな」と返す。
Aは机の上に放り出されていた自分のスマホを手に取り、カトクを開いて文字を打ち込み
、また机の上に伏せる。
ソクミナは自分のパートを歌い切った後、それはそれは今にも泣いてしまいそうな顔で、オレ達の表情をガラス越しに覗き込んでいた。
いったいオレは今どんな顔をしてお前を見ているんだろうな。
オレが動かずにいると、Aが録音ブースと繋がったマイクのボタンを押す。
「ソクミナ、休憩しておいで」
目線を逸らし、唇を噛むソクミナの姿を見るのは別に初めてじゃない。
か細い声で「行ってきます」と録音室を出ていく背中を何も言わずにただ眺めた。
とうとうこちらを振り向くことはないまま扉は閉まる。
「頼んであるから大丈夫だよ」
「何が？」
「ハニに、ソクミナを」
「そうか」
「すぐ戻って来れるかは微妙だけどね」
Aが歌詞の書かれた紙の束をまとめて、机の上へ綺麗に揃えた。
その紙には赤と黒のペンでたくさんの注釈がつけられている。
メンバーのコンディションから、どの音域でOKを出したか、それに誰がお菓子を置いて行ったとか、そんなどうでも良い事まで書いてある。
今日はなぜかうきうきした様子のジュナが大量に飴を置いていったし、普段通り全く変わった様子のないジスヒョンは飲み物を差し入れてくれた。
勿論そのことも書いてある。
「ジフナがコーヒーを飲んで『苦い』と呟いていた」と付け足されているけれど、誰もそこまで書けとは言ってないだろ。
必須事項と言わんばかりに何重にも丸を付けて強調しているし、A自体いたって真面目に書いているんだろうという事は解る。
まあ、元々はオレがAに任せたことだ。もう好きにしたらいいと思う。
言いたいことはたくさんあったはずだけど、後々嬉しそうに「記念だから」なんて言って見返しているから、もう何も言わない事にした。
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せの(プロフ) - 奈子さん» ありがとうございます！ (2019年6月23日 0時) (
レス) id: 73addbec04 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - いつきさん» ありがとうございます！ページの都合で一旦消したのですが、先程再投稿しました。お時間があるときにでも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年6月23日 0時) (レス) id: 73addbec04 (このIDを非表示/違反報告)
奈子 - 評価一個じゃ足りないです、、！！！すごく大好きな作品です！！ (2019年6月22日 18時) (レス) id: a598e2ddc7 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - この小説の雰囲気がとても好きで、投稿されるのを楽しみに待っています。突然なのですが、今日出した続編は削除されてしまったのですか？スンチョルさんとの話はとても面白かったので少し残念です…これからも頑張って下さい！ (2019年6月22日 15時) (レス) id: 317f2047c2 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - kinosuke20さん» 評価もコメントもありがとうございました。がんばります！ (2019年6月22日 10時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2019年6月6日 10時
